2005年1月30日

【Env】 バルディーズの打撃、予想以上

 1989年のアラスカ原油流出(悪名高いエクソン・バルディーズ [= バルデス] 号事件)による現地での環境影響は、いまだ「回復からはほど遠い」という状態にあることが、最近の研究報告であらためて確認されたという。

 海と沿岸生態系への影響が長期におよぶことは、ある程度予想されていたが、事故から15年、人々の記憶も薄れつつあるのとは裏腹に、ラッコ、シャチ、海鳥などに予想以上の汚染影響が残っている。1991年に巨額の賠償金を支払って事故の法的責任をとったエクソン・モービル社は、現地の環境はとっくに回復していて問題は残っていない、とする見解をとる。
── ロイターの環境ニュース(2005.1.28付)
http://www.planetark.com/avantgo/dailynewsstory.cfm?newsid=29251


 20年以上前のボパール事故(インドでの米国ユニオン・カーバイド社の農薬工場の爆発事故)でいまだに現地の飲料水源が汚染され続けている、と報じた昨年秋のBBCのニュースを思い出す。
http://www.abc.net.au/news/newsitems/200411/s1243228.htm

2005年1月27日

【Aynu】 静かな力泳

 昨日(2005.1.26)付の日経新聞(文化欄)に小川早苗さんの長文エッセイ「アイヌ女性 誇りの紋様」が掲載されてます。

 「伝統をうけつぐ」という行為が、アイヌの場合、淡々と受け身で出来ることではなく、波にさからって泳ぐような激しい意識を保ちつづけることでのみ可能だということがよく分かる。

 しかし、小川さんのエッセイからは、そのようなアグレッシブな側面よりも、むしろ、到達した静かで穏やかな境地が感じられる。

2005年1月26日

【Dev】大津波その後 ── スリランカ漁村支援

 元日のログで紹介したように、PARC(アジア太平洋資料センター)が漁村支援活動をしていたスリランカ北端のジャフナ半島も、先月の大津波で被災。避難キャンプの様子について、PARC現地駐在員の今成彩子さんから報告が届いた。

 → http://www.parc-jp.org

2005年1月25日

【Indig/Env】 サハリン・ブロッケード

 19日のログに書いたサハリン先住民族による「緑の波」ブロッケードは予定通り、開始された。現地の先住少数民族協会は、国際協力銀行(JBIC)の篠沢総裁に対し、書簡を送り、次の点を指摘し、JBICがサハリン石油開発に融資しないよう求めた。

*サハリン開発がJBICの環境社会配慮ガイドラインに違反していること
*同じくILO169条約にも違反していること


 同書簡(2005.1.21付)の日本語訳は、FoE-Japanからも入手できるが、いたちまるに連絡いただいてもテキストを回送します。

この問題について、これまでの経緯は、こちら↓から:
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/index.html

2005年1月24日

【Abs/Art】 アボリジニー美術

バラリンジ・デザイン展 2月4日〜26日 於)銀座

 → http://www.arts.australia.or.jp/events/0501/balarinji/

2005年1月19日

【Indig/Env】 サハリン、先住民族による抗議行動、パイプライン封鎖

 ロシア政府と多国籍石油会社(と裏でこそこそ立ち回る日本政府と日本企業)による開発強行に抗議し、サハリン北方先住民族が明日から本格的な道路封鎖に。

 以下、FoE-Japanの村上 正子さんからのメールをもとに、いたちまる流に編集して掲載します。
── もとは、ODAメーリングリストNo.5172として配信されたプレスリリース(2005.1.19)です。

 ニブヒ、ナナイ、ウイルタなど、サハリン北部の先住民族グループは、2005年1月20日正午よりサハリン北部ベンスコエで道路封鎖、パイプライン封鎖などの抗議行動を開始する。厳寒の中、抗議活動は数百人規模、24時間体制で続けられる。

 今回のブロッケード行動は、「緑の波」と名づけられている。

 これは、ロシア政府とエクソンモービル、英BP、サハリンエナジー(シェル・三井・三菱)など、サハリン島で石油・天然ガス開発を行っているすべての石油会社に対して行われる抗議活動である。

 不当な弾圧を受ける恐れもあることから、サハリン北部先住民族代表は、昨年末、サハリン石油ガス開発事業へ融資を検討している国際協力銀行(JBIC=日本の政府機関)や欧州復興開発銀行(EBRD)に「調停役」として現場に立ち会うよう要請していた。JBICは、この件に関して「調査中」とし、姿勢を明確にしていない(1月18日現在)。

 自然と密接にかかわりあって暮らすサハリン先住民族にとって、開発による影響は甚大。森林や動植物が失われることは、先住民族にとって死活問題である。彼らは魚への悪影響をすでに察知している。

 北方シベリア極東ロシア先住民族連合(RAIPON)は声明文の中で「これまで企業は、サハリン先住民族の権利を考慮してこなかった。環境評価には、先住民族の伝統的な暮らしへ長期的な視点での影響や対応策などが全く含まれていない」と述べている。


◆詳しい背景、および、今後の情報は、FoE-Japanの「サハリン石油開発」のページへ:
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/index.html
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/letter/20050114.html

----------------------------
 いたちまる思うに、先住民族は、かれらの文化・慣習・生活を十分考慮にいれた公正な <社会的影響評価(SIA)> の実施を求めているのだ。まともなSIAをおこなわない事業に融資するのは、JBICの環境ガイドラインに対する明らかな違反ではないか?

【Indig】サハリン続報

先住民族ニュース(57)

前便で配信したサハリンでの先住民族による道路封鎖行動の続報です。


ロシア政府と多国籍石油会社(と裏でこそこそ立ち回る日本政府と日本企業)による開発強行に抗議し、サハリン北方先住民族が明日から本格的な道路封鎖に。

以下、FoE-Japanの村上 正子さんからのメールをもとに、いたちまる流に編集して掲載します。
── もとは、ODAメーリングリストNo.5172として配信されたプレスリリース(2005.1.19)です。

ニブヒ、ナナイ、ウイルタなど、サハリン北部の先住民族グループは、2005年1月20日正午よりサハリン北部ベンスコエで道路封鎖、パイプライン封鎖などの抗議行動を開始する。厳寒の中、抗議活動は数百人規模、24時間体制で続けられる。

今回のブロッケード行動は、「緑の波」と名づけられている。

これは、ロシア政府とエクソンモービル、英BP、サハリンエナジー(シェル・三井・三菱)など、サハリン島で石油・天然ガス開発を行っているすべての石油会社に対して行われる抗議活動である。

不当な弾圧を受ける恐れもあることから、サハリン北部先住民族代表は、昨年末、サハリン石油ガス開発事業へ融資を検討している国際協力銀行(JBIC=日 本の政府機関)や欧州復興開発銀行(EBRD)に「調停役」として現場に立ち会うよう要請していた。JBICは、この件に関して「調査中」とし、姿勢を明 確にしていない(1月18日現在)。

自然と密接にかかわりあって暮らすサハリン先住民族にとって、開発による影響は甚大。森林や動植物が失われることは、先住民族にとって死活問題である。彼らは魚への悪影響をすでに察知している。

北方シベリア極東ロシア先住民族連合(RAIPON)は声明文の中で「これまで企業は、サハリン先住民族の権利を考慮してこなかった。環境評価には、先住民族の伝統的な暮らしへ長期的な視点での影響や対応策などが全く含まれていない」と述べている。


◆詳しい背景、および、今後の情報は、FoE-Japanの「サハリン石油開発」のページへ:
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/index.html
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/letter/20050114.html

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いたちまる思うに、先住民族は、かれらの文化・慣習・生活を十分考慮にいれた公正な <社会的影響評価(SIA)> の実施を求めているのだ。まともなSIAをおこなわない事業に融資するのは、JBICの環境ガイドラインに対する明らかな違反ではないか?


なお、詳細は、FoEのウェブサイト:
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/index.html
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/letter/20050114.html

2005年1月18日

【Abs】 歴史にひたるアボリジニの時間感覚

 保苅くんの『ラディカル・オーラル・ヒストリー』(2004.9.11のログ参照)の書評が日曜日の毎日新聞(2005.1.16)に載っているのに、今朝気がついた。辻原登・評。

 「豊穣なアボリジニの時間と [中略] 植民地主義的時間が、本書の中で対決する」という要約は、的を射ている。

2005年1月16日

【Paz】 思想検閲の時代に、私たちはいかなる技をみがくか

「右傾化」などという言葉が可愛く聞こえるような、この国の昨今。もはや、検閲をいかに防ぐか、よりも、まかり通る検閲にいかに効果的に対抗していくか、その技を磨き、市民が共有していくことが肝要だろう。

旧ソ連やチリ軍政下などでの人々の経験から、少なくとも次の2つがきわめて有効な「技」であることが分かっている。

*統制対象となった情報を流通させること ── あれこれ能書きをつけなくとも、「隠されようとした事実」をなるべくそのまま流すのが、一番効く!

*おちょくり、嗤い、皮肉り、戯画・パロディー化し、コケにしまくること(「ほめ殺し」ってのも、あったわな) ── 「遠吠え」に見えても、みながへこたれず元気を保つことが次につながる! 笑ひは癌の特効薬だそうですし...


■こちら↓にNHK番組から削除された元日本軍兵士による加害証言
http://www.ne.jp/asahi/tyuukiren/web-site/syougen/nhk_special.htm

■NHK内部から↓の声
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200501040201362

■元チーフプロデューサーによる↓告発会見
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050113k0000e040067000c.html

■こちら↓が検閲の的にされた「女性国際戦犯法廷」
http://www1.jca.apc.org/vaww-net-japan/womens_tribunal_2000/index.html


AB王子様のTVでの「大反論」を見ましたが、声うちふるえ、眼が泳ぎ、「激昂」というよりは「動揺」しているのが分かりますな (^_-)

2005年1月11日

【Paz】 戦争で儲けた会社ランキング

 米国が世界各地で戦争をしかけてまわるのは、石油確保と軍需産業の仕事確保のため、というのがほぼ定説といってよいが、このほど核時代の平和財団(NAPF)が配信したファクトシートは、そのことを分かりやすく示してくれている。

The Nuclear Age Peace Foundation, 31 December 2004
"The Top Ten War Profiteers of 2004"
http://www.wagingpeace.org/articles/2004/12/31_center-corporate-policy_war-profiteers.htm


 日本語訳は、益岡賢さんがすばやく『Falluja, April 2004 - the book』のサイトに載せてくれている。さすが!
   ↓
「2004年に戦争で儲けた企業トップ10」
http://humphrey.blogtribe.org/entry-2d5e8d4fc030aa4f9c462b483dcd5d16.html

2005年1月9日

【Egy】 萬晩報から四題

 メールマガジン『萬晩報』は、それぞれの筆者の個性とそれを裏打ちする体験の豊かさが感じられて、いつも面白い。

 本日着信の藤澤みどりさんの「南アジア津波災害ー3分間の沈黙」(2005.1.9付)
は、う〜ん、欧州人の共同体意識というものの奥深い強さが感じられる報告で、一読に値する。おすすめ。黙祷のとき、バスも路肩に寄って止まる、銀行も郵便局も窓口の仕事が止まる、ラジオも沈黙する、というのは、やはりハッとさせられるね。

『萬晩報』の主宰者である伴 武澄さんの最近の配信では、電気の「直流/交流」をめぐって、なるほど目からウロコ、はたと膝をうちました。

「直流ハウスでエネルギー革命は可能か!?」(2005.1.6付)
http://www.yorozubp.com/0501/050106.htm

「エジソン時代の直流・交流論争」(2005.1.7付)
http://www.yorozubp.com/0501/050107.htm

「究極の分散型電源は燃料電池車」(2005.1.8付)
http://www.yorozubp.com/0501/050108.htm

2005年1月8日

【musica】 トスカニーニはやっぱ、すごいわ

 もはや、松もとれてしまいました(というても、わが家では松飾りも何もしないんですが...)。

 どうも、また、目を△にする毎日が始動してしまったようなので、ちょいと精神の均衡をとりもつために、最近のお気に入りの曲と演奏を紹介。

 ずいぶんひさしぶりに、トスカニーニの演奏をきいた。BBCシンフォニーとのライブでブラームスの2番。たぶん1938年の演奏会。LPにはなっていなかったのが、93年にCDに焼かれたものらしい。

 いやぁ、昔々 ── もう40年近くも前の頃(^^;) トスカニーニが好きで好きで、よくきいたものですが、その頃は、彼の快テンポの疾走ぶりがたまらなかった。でも、このニ長調シンフォニーでは、テンポはあいかわらず早いのだけど、ものすごく歌うフレージングが印象的だ。快速なのに、ゆったりときこえる。

... 昔はそういうところが分からなかっただけなのかも知らんが。

 CDレーベルはEMI系列で、Testament SBT-1015 モノラルですが、充〜分堪能できます。

【Indig】 先住民族の国際10年、しきりなおし

 1993-2004年は、国連の「世界の先住民の国際10年」だったのだが、「先住民族の権利宣言」の草案(本来は、人権委員会→経済社会理事会→総会と順次クリアしていくべきもの)が塩漬けにされるなど、実質的な権利保障の進展のないまま終了してしまった。これでは、いくらなんでも、というので、仕切り直しの第2期を設定することになった。

 この第2期国際10年(Second International Decade of the World's Indigenous People)は正式に決まったのか、という問い合わせを受けたので、チェックしてみたら、次のように確定したようだ。

第59回国連総会の公式記者発表10321番(2004年12月20日付)
http://www.un.org/News/Press/docs/2004/ga10321.doc.htm
のなかに、こう明記されている。
----------------------------
Among new initiatives enacted as a result of the Assembly's actions in other areas of its work, a second International Decade of the World's Indigenous People was proclaimed, to commence on 1 January 2005. By the text, the Secretary-General was requested to appoint the Under-Secretary-General for Economic and Social Affairs as the Second Decade's Coordinator, and to establish a voluntary fund as a successor to the already-existing Voluntary Fund. The Assembly also decided to continue observing the International Day of Indigenous People during the Second Decade.
----------------------------

第59会期の総会決議の一覧表
http://www.un.org/Depts/dhl/resguide/r59.htm
を見たところ、174番決議(A/RES/59/174)がこれにあたることが分かる。

決議本文はまだ上記の国連ウェブサイトには掲載されていないが、いつものペースだと、2月頃にはアップされるのではないかしら。

決議の原案は、次の国連サイトからダウンロードできる(PDF文書)
http://daccess-ods.un.org/TMP/2934065.html
けれど、これは原案なので、総会にかかる前に微妙に修正されていると思われます。

2005年1月7日

【Nuke】 平井さんロング・インタビュー、連載完了

大晦日に紹介した故・平井憲夫さんのロング・インタビュー記事、市民新聞『JanJan』で8回連載が完了した。

最終回(8)のページ↓から、各回にリンクしてます。
http://www.janjan.jp/living/0501/0412292142/1.php

2005年1月6日

【Indig】 アンダマン諸島の続報

目に付いた記事を2本

●ロイター(2005.1.6)「Indian Tribe May Struggle to Survive After Tsunami」
http://www.planetark.com/avantgo/dailynewsstory.cfm?newsid=28817

先住民族(漁撈採集民)に直接の犠牲者はあまり出なかったようだが、津波でマングローブ林と入り江の生態系が掻き乱されたため、彼らの食料採集がしばらく難航する恐れがあり、そうなると、人口の少ない集団(オンゲ、ションペンなど)はかなり危機的状況に陥る恐れがある、との見通しが語られている。

●日刊ベリタ(2005.1.4)「孤絶して生きるアンダマン諸島の先住民 大きな被害は免れる? 」
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200501041834192

こちらの記事では、逆に、町の生活に同化していない自然のなかで暮らす集団は、森から食料調達できるが、むしろ同化して都市での食糧供給に依存してしまっている人々のほうが危機は大きいだろう、とのサバイバル・インターナショナルの見解を伝えている。

2005年1月5日

【Indig】 アンダマン・ニコバル、追伸

 なぜか、毎日も読売も共同通信も、アンダマンからの取材報告を競うように記事にしている。自由に取材に動ける地域ではないので、いきおい、似たり寄ったりの伝聞を並べている。5日付けの毎日は、BBCの報道内容を紹介しているが、その中味は実はAFPの記者が沿岸警備隊のボスから聞き出したこと(1月2日の当ログを参照)。

インド政府が外国からの支援を「謝絶」したというのは、アンダマン・ニコバルにあまり外国人をいれないことと関係があるのかな、という気もするが、邪推か。

2005年1月4日

【Indig】アンダマン・ニコバル続報

 サバイバル・インターナショナルのソフィー・グリグさん(1月3日のログを参照)からメールの返事があった。
 
 津波の直後、島々でくらす先住民族が大勢流されたという噂が流れたが、確たる根拠は無かったそうだ。一方、インド軍は「大丈夫、大丈夫」ときわめて楽観的な報告をしたが、これも根拠は無かったそうだ。ニコバル本島のションペン人のように、もともと入植インド人との接触が少なく、人が行っても隠れたり散ってしまう集団なので、津波後の状況について、確実な情報は何も得られていないとのこと。

 確実な情報がはいったら、また知らせてくれるとのこと。

 昨日ログを書いた時点では見ていなかったのだが、今日、仕事始めで職場に届いていた元日の『朝日新聞』をみたら、なんと、アンダマン・ニコバルの報告が載っていた(大阪14版の2面と4面、大野良祐特派員のポートブレアでの聞き込み)。それと、今晩のTV朝日(報道ステーション)の大津波特集のなかでもアンダマン・ニコバルの紹介があった。伝統的な狩猟採集生活を続ける少数先住民族がいること、取材が制限されていること、インド海軍にとって要衝であること、などが紹介されている。

 記事や番組ではふれられていなかったが、この地域に入植しているインド人は、まったくの一般人というわけではなく、退役軍人が多くを占めているので、全体として“軍の島”という様相を呈している。政府は「少数民族はちゃんと保護されている」と言って取材をさせないが、サバイバル・インターナショナルはかねてから人権侵害や土地剥奪がある(とくにジャラワ人の場合)としてキャンペーンを展開している。

2005年1月3日

【Indig】アンダマン・ニコバル

 きのうのログでアンダマン・ニコバル諸島の先住民族への津波被害の心配のことを書いたら、そのあとサバイバル・インターナショナル(※)からの記者発表(1月2日付)が届いた。

それによると:

*ジャラワ人(270人)は被害なし(居住地域が沿岸ではない)。
*オンゲ人(約100人)海の動きを熟知していたので、大津波を察知し、 高台に逃れて無事。
*アンダマン本島の41部族、おそらく被害はないものと推定されるが、確認とれず。(昨日のログで紹介したションペン人については「信頼すべき情報なし」とされている。)
*センティネル島民(50-250人)、ヘリから見たところ、生存している模様だが、島に着陸できないので確認とれず。
*ニコバル人(3万強)津波被災いちじるしい。

 今回、アンマン諸島よりもニコバル諸島のほうではるかに被害が大きかったそうだ。先住民族諸集団のうち、政府の直接保護管理下にはいっている(指定集落に定住している)部族については状況が把握できているが、そうでない人々については十分な状況把握ができていないらしい。

 AFP電との内容の不一致については、サバイバルのアンダマン担当であるソフィーにメールで問い合わせを出しておいたので、返事がきたら、紹介することにする。


【註】 Surviaval International は、世界各地の少数先住民族の生存、文化維持、人権擁護のためのキャンペーンを展開するNGO。1969年設立。人類学者をはじめとする多くの研究者やジャーナリストらが参加している。
http://www.survival-international.org
日本でのネットワークは
http://www.asahi-net.or.jp/~vi6k-mrmt/survival.htm



【Indig/Env】 サハリン先住民族の道路封鎖

先住民族ニュース(56)

FoEの村上正子さんからの情報の転送です。
(重複してご覧になる方、ごめんなさい。)

=====転載はじめ=====

『サハリン北部の先住民族が石油ガス開発に抗議し、2005年1月20日より
建設道路の封鎖を開始。石油会社との調停をJBICなど4行に申し入れ』

ニブフ、エベンキ、ナナイ、ウイルタなどサハリン北部の先住民族が、
サハリン島で行なわれている石油・ガス開発に抗議し、1月20日より
「建設道路封鎖などの抗議行動」を行なう決定をしました。先住民族
はサハリンエナジーなど石油会社に対し、サハリン開発が過去、現在
そして未来にわたって先住民族の環境と伝統的な生活に与える影響を
判断するための「民俗学的専門調査」の実施を求めています。

これに先立ち先住民族の代表は、現在サハリンII第2期工事への融資を
検討している国際協力銀行(JBIC)など4行に対し、石油会社との問題
解決を行なう「調停役」として、抗議行動に合わせてサハリン入りを
要請するレターを提出しました。憲法に基づく権利を訴える先住民族
に対して、州政府や石油会社から不当な圧力がかけられる恐れがある
とされており、問題解決にはJBICなど金融機関の関与が重要だとして
います。

レターで先住民族の代表らは、JBICに返答を求めています。今後の
状況が分かり次第またお伝えしていきます。以下、先住民族代表より
12月28日付けでJBICに送られたレターです。

———————

国際協力銀行
総裁 篠沢 恭助 殿

ユジノサハリンスクで2004年10月29日、第5回サハリン北部先住民族
大会が開かれました。少数民族の代表が集まり、サハリン島で進めら
れている石油ガス開発が、サハリン少数民族の古来の環境や伝統的な
土地使用、および生活に与える複雑な問題について話し合い、分析し
ました。

そこで我々は、この開発によって少数民族と石油会社の間に生態学的・
社会経済的にさまざまな問題が起こっていることを確認しました。
石油会社の中には、サハリンII第2期工事に伴い、現在貴行に巨額の
公的資金の融資を要請しているサハリンエナジー社も含まれます。

今大会で少数民族の代表は、採掘基地モリクパックが設置された1998年
以来、サハリンIIプロジェクトが先住民族に対して漁業資源の損害など
数々の影響を及ぼしていることを宣言しました。こうした状況にもかか
わらず、サハリンエナジーとその株主のシェル、三井、三菱は、先住民
族コミュニティに対し、適切な補償を直接行なってきませんでした。同
プロジェクトが始まってから10年の間にサハリンエナジーが行なった慈
善的金銭支援は約33万ドルと十分なものではなく、そして今、同プロ
ジェクトは急ピッチで進行しています。

我々は、サハリンIIプロジェクトの建設により、パイプラインがサケの
産卵する川を掘り起こし、横切ることで漁業資源が減少することや陸上
パイプラインがトナカイの牧草地や何種もの野生生物が生息する森を破
壊すること、そして先住民族の環境が汚染されることを懸念しています。

先住民族が伝統的に使用する土地での動植物への被害は、先住民族の生活
に死活的な損害をもたらします。しかしこれまで、先住民族の伝統的な
土地使用や生活様式に与えられた損害は考慮されておらず、サハリンエナ
ジーの経営者にも明らかにされていません。

それゆえに、第5回サハリン北部先住民族大会の代表は、サハリンIIを含む
サハリン石油開発計画が、先住民族の伝統的な自然資源の保護のために
近代的かつ文明的なアプローチを取っていないどころか、先住民族の厳しい
生活状況をさらに悪化させていることを声高に表明します。

開発が進む中、第5回サハリン北部先住民族大会は、サハリンIIプロジェ
クトの主要な道路やパイプライン建設ルートを塞ぐ抗議行動を実施する
ことを決めました。指揮を取るために設置された特別運営委員会によって、
2005年1月20日より封鎖を開始することが決定されました。

我々の要求は、サハリン先住民族の環境と伝統的な自然資源使用に対して
サハリンIIプロジェクトが過去、現在そして将来に与えた(る)影響を
判断するための「独立した民俗学的専門調査の実施」だけです。

先住民族に与える影響に関して、サハリンエナジーが行なった環境社会
影響評価書(ESHIA)は信用できるものではありません。民俗学的専門調査
は、完全に独立的に行なわれなければなりません。それを実現するためには、
「先住民族コミュニティあるいはその代表が、独立専門家か専門的組織を
選ぶ権利を有すること」と「サハリンエナジー社が、民俗学的専門調査に
かかる費用を負担すること」を提案します。同プロジェクトの設計変更など
も含めた、適切で不可欠な予防措置と補償方法を決定できるのは、この方法
しかありません。

これまで、問題解決を探るために石油会社と対話を試みてきました。石油
会社に対し、独立民俗学専門調査の実施に合意し、サインするよう提案して
きました。そして2004年12月15日、サハリンで開発を行なっているすべての
石油会社と会合を持ちました。しかし、ロシア国営企業ロスネフト社から
CEOのラミル・バリトフ氏が参加しただけで、サハリンエナジーなど外国の
石油会社は、問題解決に対し何の権限も持たない広報の社員を送ってきました。
これは、サハリンエナジー社とその株主であるシェル、三井、三菱が、
サハリンの先住民族を軽視していることを意味しています。

もはや我々には、建設を妨げる長期的な抗議行動を取る以外に、サハリンの
先住民族の環境、自然資源、伝統的生活様式を守る可能性は残されていません。

サハリン先住民族組織の代表は、サハリンIIプロジェクトの融資を検討して
いる各行の総裁に対し、こうした問題を解決するための協力を要請します。
抗議活動は2005年1月20日から実施予定ですが、その期間、サハリンエナジー
と先住民族の調停役として貴行から代表をサハリン島へ派遣しほしいのです。
こうした調停が、問題解決に向け重要な役割を果たすことを確信しています。

貴行の代表がこの期間にサハリンにいることが、先住民族に対する石油会社や
ロシア政府からの不当な弾圧を防ぐ事になることにもどうぞ留意してください。

このレターに対する返事をメールあるいはファックスでいただけるようお待ち
しています。

Alexey Limanzo,
President of the Association of Indigenous Peoples of North Sakhalin Region
(サハリン北部先住民族協会代表)

Vladimir Sangi,
Chair of the Council of Elders, Noglik Society of the Nivkh People Ketnivgun,
tribal chief and member of the UN Economic and Social Forum organization International League for Human Rights
(ノグリキ地域ニブフ長老議会議長、国連経済社会フォーラム組織人権国際連盟部族長)

Kim Limanzo,
Chairman of the Association of Indigenous Peoples of Nogliki District
(サハリンノグリキ地区先住民族協会議長)

Vladimir Machekhin,
Chairman of the Regional National Cultural Autonomy “Evenki of Sakhalin Region”
(サハリン地区エベンキ:地方民族文化自治議長)

=====転載おわり=====

over

2005年1月2日

【Indig】 大津波でアンダマン諸島は...

 インド洋大津波の起因となったスマトラ沖地震第2波の震源域がアンダマン・ニコバル諸島の直近だというので、ジャラワ(アンダマン・ニコバル先住民族)の人たちがどんな状況におかれているのか、気になっている。

 以前からインド政府(軍)の報道規制がかたくて、マスメディアにはほとんどまともな情報が流れない地域なのだが、今回、ロイターとAFPで異なった見方が報じられている。

 ロイターのほうは、先住民族は島々の奥の森林を中心に居住しているので、ほとんど被災していない、という沿岸警備隊筋の見解を伝えている。
http://www.planetark.com/avantgo/dailynewsstory.cfm?newsid=28746

 AFPのほうは、沿岸湿地(マングローブ)地帯にくらすションペンと呼ばれる集団がほぼ壊滅した恐れがあるという見方を、海軍筋の説明とAFP通信員の取材情報として伝えている。
http://www.abc.net.au/news/newsitems/200412/s1274291.htm

 ジャラワの諸集団(いわゆる Andaman Islanders)は、人類学では「有名部族」だが、ここ何十年かはインド政府の隔離政策のもと、外国人研究者はアクセスできない状況が続いていると聞く。インドネシアとの領有権争いも背景にあるのだろう。インドの人類学者による報告はあるのだが、その政治性から、報告内容の評価は難しい。
(※もしかすると、いたちまるの勉強不足で、最近は状況が変わっていたのかも知れませんが... ご存じの方いらしたら、ぜひ教えてくださいな。)

2005年1月1日

インド洋大津波 緊急支援

あけまして、すこしだけおめでとうございます。

●インド洋大津波の被災地への緊急(および長期的)支援が赤十字、国連、WHO、各国政府機関、さまざまなNGOを通じて、取り組まれていきます。

このような規模の災害は、既存の政治・経済・社会的差別を増幅するというかたちで「人災的に増幅」していくことがあまりに多く、支援がどのような形で現地の人々に届くか、実際の「支援活動・支援物資」が現地の社会にどのような影響をもたらすかという難しい問いをつねに私たちにつきつけてきます。

そのような視点から、もっとも社会的に弱い人々に直接支援がとどく信頼できる窓口として、いたちまる個人的おすすめは、次の2つです。詳細はそれぞれのサイトをご覧下さい。

★アチェ(スマトラ島北西地域)の被災者支援: 
インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)
→ http://www.nindja.com/gempa.html

★スリランカ北部(とくにジャフナ半島地区)の被災者支援: 
アジア太平洋資料センター(PARC)
→ http://www.parc-jp.org/campaign/sriranka/sriranka041227.html