2012年9月23日

高木基金(原発震災2011緊急助成)報告会


2012年9月23日(土)
於: 東京、日比谷コンベンションセンター


高木仁三郎市民科学基金(略称:高木基金)
2011年度原発震災緊急助成の成果発表会


  緊急助成の趣旨・経緯については → こちら
  発表会のプログラムは → こちら
  中間報告会(2011年10月1日)の実況記録は → こちら
  同じく中間報告会の映像記録は → こちら


※ 以下のノートは、細川が個人的に記録したメモを何人かの方にチェックしていただいた上で公開するものです。高木基金の公式記録ではありません。当日の発表内容を網羅したものではなく、ところどころ抜けている部分があります。今後、聞き間違いなどを修正する余地もあります。文責は細川に属します。敬称略おゆるし下さい。

【更新記録】 
  2012.10.14 掲載
  2012.10.15 (1)と(9)に一部追記
  2012.10.16 (2)の誤記1ヶ所と(3)の誤変換1ヶ所をそれぞれ修正
  2012.10.16 (2)の発表者お名前の漢字表記を訂正(滝 → 瀧)<(_ _)>
  2012.10.17 (3)の数字など4ヶ所修正、3ヶ所補筆
  2012.10.18 (2)と(7)の質疑部分に各1ヶ所補筆


10:40 開会、あいにくの雨模様
・司会=菅波 完(高木基金事務局)
・代表理事=河合弘之弁護士、挨拶 ── 推進派・原子力ムラの猛反抗という情勢
・開始時点で30数名(関係者含む; 最終的には関係者のぞき57名の参加)

・出席している高木基金の役員を紹介
  理事=河合弘之、藤井石根、堺 信幸、細川弘明
  選考委員=大沼淳一、貴田晶子、山下博美、鈴木 譲
  顧問=吉岡 斉
  事務局=高木久仁子、菅波 完、村上正子、小山貴弓、水藤周三


(1)青木一政(フクロウの会=福島老朽原発を考える会
「子どものの生活環境の放射能汚染実態調査と被ばく最小限化」

 (助成金額: 100万円+追加160万円指定寄付、計260万円)
  • 海外NGO(ACRO, NIRS)から測定器などの提供 → 福島に届け、小中学校の校庭測定、県内の4分の3が「放射線管理区域」のレベルに汚染されていることが判明
  • 20mSv/yrを適用する文科省の方針に対して、福島の親達が強く反撥、文科省への直接要請行動(11年4月・5月) → 「1mSv/yrをめざす」という大臣の言質
  • 子ども達の被曝量を最小化するための調査と実践活動を開始、課題を明確化、市民みずからが取り組みつつ、行政に何を求めるべきか戦略を練った。
  • 福島、周辺地域、首都圏ホットスポットなどの住民からの相談や依頼に対応
  • ACRO、神戸大山内教授など研究者・測定機関との連携
  • 行政へのはたらきかけ、メディアへの発信
  • 江東区でのホットスポット調査(江東区の市民グループと共同)幼稚園・学校・公園などの測定、スラッジプラント周辺の測定
  • 埼玉県三郷市でも同様調査活動
  • 福島市内のホットスポット(渡利地区)の汚染調査、2011年8月の「除染モデル事業」(福島市)実施後の測定で、相当な汚染が残っていることを明らかにした。
  • 土壌汚染を継続測定、ホットスポット地区で濃縮が進んでいることを解明
  • 土湯温泉(福島市内だがほとんど汚染されていない)への短期保養プログラム実施
  • 子どもたちの尿のセシウム濃度測定、検出マップ ── 1年以上たっても検出は続いている(初期被曝だけではなく、日常生活で継続的に内部被曝している)。高い検出事例については、フォローアップ。食生活、
  • 屋内の埃(ハウスダスト)のセシウム調査 ── 明らかに汚染
  • 国・行政の測定や対策では「子どもを守ること」が優先されていない。
  • 被曝を軽視する立場の巻き返しの動きが強くなっている。市民自らが測定することで、知識レベルと意識を向上させていく必要あり。市民の立場からの監視継続が重要。
  • ちくりん舎の設立、ACROからの6万ユーロの助成によりゲルマニウム半導体検出器を入手、たまあじあさいの会や他団体と共同で運営。

<質疑応答>
    吉岡顧問: 子どもへの施策、大人とは異なる形でどうしたらよいのか。
     ── 青木: コミュニティ単位での避難が第一。自主避難の多くは昨年の夏までに決断して動いた。残った人は「避難」できない事情をかかえた人たち。次善策として保養プログラムなどを組んでいくこと。

    貴田委員: 福島市内の下水汚泥焼却により新たな汚染源になっていると見てよいのか?
     ── 青木: 江東区の例、スラッジプラント周辺と風下が特異的に高い。施設内の線量も高くなっている。煙から粉塵が飛んでいる可能性と、焼却灰のストックパイルから飛散している可能性、いずれにせよ二次汚染が起きていることは明らか。

    貴田委員: 尿中セシウム濃度が下がる子と下がらない子の違いは?
     ── 青木: 運動部の子で土ぼこりを吸うことが多いといったケース。また、避難した子は下がっている。


    11:20
    (2)瀧岡 桂(未来につなげる・東海ネット 市民放射能測定センター、略称:Cラボ)
    「東海地方・市民放射能測定センターの開設と食品および環境の監視」

     (助成金額: 100万円+指定寄付134万円、計234万円)
    • 当初の目標=測定体制の確立、自主基準の提案、汚染地へのチーム派遣
    • 2011年7月に測定器(アロカのNaIシンチ)入荷、9月より依頼測定開始、幼稚園での陰膳調査、給食食材検査、岩手県での土壌測定調査など
    • 腐葉土からのセシウム検出など
    • 行政への申し入れ、新聞での
    • これまでの測定実績1250検体、国・自治体による分析件数11万の約1%に相当、公的機関による測定がいかに少ないか
    • 給食の脱脂粉乳や干し椎茸などのセシウム検出は、使用中止に結びついた。(暫定基準の時期)
    • 腐葉土から2万Bq/kg以上のレベルのセシウムを検出、愛知県がすでに把握していた汚染だったが市場からの回収漏れだった。県の農林水産部に通報、県が再測定したら800Bq/kg → 含水率補正計算で410、「有効数字は1桁」という丸め(農水省の指示)により400Bq基準をクリア(!)と判断され販売再開。
    • 20名のボランティア測定スタッフ
    • 自治体による測定器購入について、市民から多数問合せ、Cラボからの情報提供で機種変更に到ったケースも
    • マリネリ容器の導入、鉛遮蔽体の追加(水道管の廃材利用)により、ソフト改造による測定時間の延長・短縮、波形解析ソフトも。これらにより改良測定精度向上。
    • 全国の市民測定所間の測定結果標準化 ── クロスチェック、性能比較表、標準試料(玄米)の調整・貸し出し、統一フォーマットによるデータベース構築など
    • クロスチェックにより、測定器の特長に応じたばらつきも分かってきたので、標準試料の共有は重要。含水率を補正する計算法などを確立。
    • 岩手県南部の土壌放射能調査、若い母親中心のグループと連携。汚染マップ作成を目的に。調査のための講習会を開催。統一フォーマットによるデータの共有と総合化

    <質疑応答>
      藤井理事: 汚染食品の廃棄処分の方法は?
       ── 瀧岡: 行政や流通業界ではどうしているのか不明

      瀬川嘉之氏: 測定所では、どう処理?
       ── 岡: 食品以外は依頼者に返却。食品は保管し、クロスチェック後は生ごみとして処分。高い検出値のものは保存している。

      瀬川嘉之氏: 椎茸へのフォローは?高いことはもう分かっているので、どう対処?
       ── 大沼委員補足: 椎茸については、流通ルートを追跡してみると、とても複雑。複数の問屋を経由し、途中で混ぜられて、産地のロンダリングがおこなわれているようだ。

      茨城県取手市の男性: 茨城県では測定結果を公表してくれない
       ── 岡: Cラボは原則公開、ホームページに掲載している。

      Q 被曝家計簿のフォーマットは?
       ── 大沼委員: まだできていない。全品検査が実現していないので。

      吉岡顧問: 岩手南部での調査の結論や方向性は?
      ── 岡: 国の調査では15cm深さまでのサンプルをまぜて測定しているので低い数字になり、それで安全宣言。市民が不安 → 自主測定1000Bq超は80検体のうち約20(max4000Bq台)。一関ホットスポットの調査はまだできていない。
       ── 大沼委員補足: 雨樋下などの特異点は外している。子ども達の遊ぶ場所を中心に、空間線量率で高いところを土壌濃度で確認する、という作業。

      細川理事: 全国の市民測定ネットワークの戦略的見通しは?
       ── 岡: いま議論中。

      (事務局)菅波: 岡さんがCラボに関わった経緯は?
       ── 岡: 流通の会社で働いていて、東北の産品を扱っていたので、実態を把握したかった。

      河合理事: 判定基準は?
       ── 岡: Cラボでは食品ごとに自主基準、年間0.3mSv(内部被曝)におさまることを目安に。
       ── 大沼委員: おおむね30Bq/kg・L、測定精度があがって1桁Bqも確実に測れるようになると、かえって有機生産者を苦しめることになるのでは、という議論もしている。

      貴田委員: 標準試料やクロスチェックなどの試みはたいへん良い。市民測定の正確さを確保するうえで重要。134/137比の違いの原因は?
       ── 大沼委員: メーカーごとのソフトの違い。コンプトン比などの処理。

      奈良本英佑氏: 測定実績、Cラボで政府の1%というのは驚くべきこと。政府の調査データがそんなに少ないということか。
       ── 大沼委員: 厚労省がホームページで公表している件数(都道府県での測定の集計)と対比した。


      11:56
      (3)村上喜久子(母乳調査・母子支援ネットワーク)
      「母乳と乳幼児の尿の放射能検査を実施して」

       (助成金額: 100万円+指定寄付57.5万円、合計157.5万円)
         ※実際の調査費用は990万円かかってます!
      • 東北・関東のなかでも空間線量の高かった地域に限定して、調査。
      • 事故直後、行政から発信される母乳についての注意事項に疑問があった。放射線審議会、母乳から乳児への放射能の移行について要調査という勧告を(福島事故以前に)出している。事故後、国は母乳検査に(当初)取り組まず。
      • 当時、行政からまわってくる試料の検査で一般の検査会社は手一杯、市民からの検査要請に応じてくれるところは限られていた。東京の検査会社(東京ニュークリアサービス)で母乳の検査をやってくれることになり、11年3月下旬から測定(福島の母親たち、茨城の常総生協など協力)。10人にひとりくらいの頻度でヨウ素、セシウム検出。100ccサンプルなので3Bqが限界(正確な測定では1L〜5Lの母乳が必要)。
      • 問合せは東京・神奈川・埼玉のお母さんからが圧倒的に多かったが、全部に応じられず、当初は高線量地域のものに専念。寄付金が集まった時点で応じられるようになった。
      • 7月〜8月にかけて、検出率下がる。乳児の尿の測定に切り替える。紙おむつを回収、尿1kgあれば検査可能。2人に1人くらいの乳児の尿から0.数Bqレベルで検出。
      • 検査応募者が少なかった栃木、岩手南部などには、こちらから検査への参加を呼びかけた。1歳2ヶ月の乳児から7Bq/kg尿の検出例も。再検査してもあまり下がらない。
      • 福島県でしか健康調査がおこなわれていない。東京、神奈川、埼玉や岩手、茨城も栃木も健康調査をしていない。
      • 東京、神奈川などの関東圏からの自主避難者の子どもたち(0〜15歳)の甲状腺検査、血液検査。18人中16人で「要観察」と判定されている。早急な健診が必要。

      <質疑応答>
        瀬川嘉之氏:「子ども被災者支援法」ができたので、その枠を活用して、検査・健診も実現させていく必要がある。ただ、健診は、その結果にもとづいて「健康指導をする」ことが重要、それなしにやたら検査しても不安をあおるだけ。

        大沼委員: 紙おむつの尿検査について。Cラボではゼオライトで濃縮する試みをしているが。
         ── 村上: 検査会社では紙おむつから抽出して濃縮する、と言っている。

        鈴木委員: 非汚染区の対照データも欲しい。
         ── 村上: 費用と時間の制約から、できていない。


        12:25(定刻10分遅れ)
        <昼食休憩> 



        13:00
        (4)白石草(OurPlanet-TV
        「検証!テレビは原発事故をどう伝えたか」

         (助成金額: 30万円)
        • 中間報告のときは、日本のメディア制度の特殊性を論じた。また、当初計画では、フリーやソーシャルメディアの取材実態を記録・検証・評価する予定だった。 → 中間発表での反応(テレビ報道への怒り、etc)をふまえ、秋に、企画変更し、テレビ報道の検証を軸にする。
        • 原発事故を報じた初期テレビ映像の収集、1月までに全映像を入手。
        • 2月に朝日ニュースターで放送する予定だった。著作権をめぐり弁護士と協議、3月の放送2日前に局から中止要請あり、中止(その時間帯はフィラー映像 [きれいな景色だけ] が放映された!)。4月にインターネットで配信(4時間番組)。8月にJCJ(日本ジャーナリスト会議)賞受賞、大賞は東京新聞。
        • 検証の4つの視点: 緊急事態をどう伝えたか?、避難指示をどう伝えたか?、1号機爆発をどう伝えたか?、被曝リスクをどう伝えたか?
        • 直後の報道: 各社、はじめは女川に注目。NHKは民報よりも2時間遅れで「原発」を報道。
        • 原発(富岡の監視カメラ)の映像をライブで流しながら、それが福島第1原発であることを一言も言わなかった。NHKに到っては翌日まで福島原発の津波映像を流さず(同じ監視カメラからとった平常時の福島第1原発の映像を流していた!)
        • 1号機爆発(12日15:36)TBSが3分後に速報、福島中央テレビが爆発映像を放映、系列の日テレが流したのは16:51、フジ16:51、NHK16:52、テレ朝17:05、完全に横並び。保安院の指示に応じて報道。
        • OTVの検証番組を、TVの現場の人たちはわりと多く見てくれていて、応援(もっと厳しく検証しろ)の声を寄せてくる。TV局もみずから検証が必要。
        • OTVの検証番組で著作権の争いは起きておらず、同種の検証番組をさらに実施していくことが重要。(OTVの検証番組のDVDを実費で提供しています。)
        • MBS「たね蒔きジャーナル」の打ち切りについては、メディア関係者のあいだで疑問の声が多くあがっている。メディアが事故前に戻ってしまう、という懸念。カウンターが必要。
        • BPOへの苦情申立てをしていくべき(市民によるTV局追及)。TV局に言っても埒あかない。

        <質疑応答>
          吉岡顧問: 政府の事故調は、検察的な立場なので、「メディア報道が不適切だった」ということは言えない。自主的な検証が重要。報道に関しては「箝口令」など具体的にどのような統制がおこなわれたのか、「専門家」の人選の経緯などを、ぜひ検証してほしい。
           ── 白石: 「箝口令」というよりも、記者の問題意識の劣化がはげしい。取材による裏付けではなく、政府が発表したことをもって「裏付け」とみなして一斉に報道する、という現状。「専門家を呼ぶ」仕組みはとってもいい加減。安易に選んでいる結果(今までの人脈に依存、ほいほい出てくれる使いやすい人が優先される)、テレビ全体に蔓延している。箝口令よりも同調圧力による劣化というのが、実はより深刻な状況。

          青木一政氏: 福島第2原発の状況もほんとに危機的だった(SBOまで到った;電源車がはいって危機一髪)。女川も危うかった。あたかも何も無かったかのようにされてしまっている、これについての検証もぜひ。



          (5)島田恵(六カ所みらい映画プロジェクト
          「避難区域の人々の生活環境の変化と意識調査、六カ所村民・青森県民の意識調査」

           (助成金額: 30万円)

          ・編集中の作品『福島 六カ所 未来への伝言』のラッシュを部分上映。

          <質疑応答>
            藤井理事: 完成予定は?
             ── 島田:  2013年2月、完成上映会をめざしています。各地での自主上映を企画する。

            山下委員: 現地に住んでいる方に寄り添って作られている印象うけた。上映支援のお手伝いの方法は?
             ── 島田:  最初はプロジェクト主催の上映会を何回かおこなう。それを受けて各地で自主上映会を企画してほしい。ウェブサイトで通信あり。

            貴田委員:「伝言」の中味は? 核廃棄物のことはどう伝える。
             ── 島田:  六カ所のことを伝えたいというのが(事故前のクランクイン時の)当初の企画。本編ではインタビューなどを交えて状況をもう少し説明する。


            (6)吉田明子(eシフト=脱原発・新しいエネルギー政策を実現させる会
            「エネルギー基本計画の課題分析、市民版基本計画策定と社会ムーブメントづくり」

             (助成金額: 80万円)
            • 被害の最小化と責任の明確化、脱原発政策提言、社会ムーブメントづくりの3つを柱に活動。
            • 月1回、全体会合(都内)20〜30名。約60団体、個人をふくめ250人がMLに参加。6チーム:eシフト市民委員会、メディアアクションチーム、規制庁チーム、東電チーム、ブックレット編集チーム、選挙対策チーム。
            • 成果と課題: ゆるやかなネットワークの形成、情報共有・意見交換はうまくいっている。連携アクションも。多様性の維持と機動性・一貫性の確保には課題。意志決定の方法も課題。
            • 「原発ゼロ」選択肢(エネ基本計画)実現にむけたアクション(2012年夏)。「国民的議論」のそれぞれの場面でのアクション ── ウェブサイトでの情報発信、パブコメ(呼びかけ → 8万9千件のうち9割が原発ゼロ、即時ゼロが8割)、各地での意見聴取会、討論型世論調査、マスコミの世論調査、民間主催の説明会、自主的意見聴取会の開催(eシフト主催で東京・福島、全国22箇所で自主的な会合開催)
            • パブコメに、ほとんどコピペが無かったことは特筆に値する。「自分の言葉で語ろう」という呼びかけが通じた。政府も無視できず。9/14政府決定で「原発ゼロ」の文言が書き込まれたことは大きな成果。
            • 福島での聴取会はとりわけ印象深かった。「この苦しみを繰り返してほしくない」との思いが強く反映された。
            • 規制委員会の人事について、ほぼ全議員を訪問。「問題を知らなかった」という反応も少なくなかった。
            • 「脱原発総選挙」ウェブサイトを立ち上げたところ。

            <質疑応答>
              吉岡顧問: 市民版エネルギー計画の策定はどうなった。
               ── 吉田: 基本計画を8月に発表した(20頁程度のもの)。

              藤井理事: 原発ないと仕事なくなる、という人たちへのメッセージを具体的に。選挙対策チームは具体的に何を?
               ── 吉田: 候補者アンケートが有力手段。「エコ議員通信簿」(マエキタミヤコ氏らが以前からやっていた)の発展版として実現したい。「投票に行こう」という呼びかけも重要。ポスター投稿・公開のウェブの仕組みを作った。

              瀬川嘉之氏: 規制委員会への今後の対応は?
               ── 吉田: ひきつづき監視。

              細川理事: シャドー規制委員会をぜひ立ち上げよう。またパブコメはすごい資産。政府・官僚は脅威を感じて棚晒しにしている。あれをもっと使っていこう。
               ── 吉田: たいへん大きな実績であるし、リソースとしても大きいので■

              大沼委員: 東海地方の若い人は「落とすんじゃー」運動をやってる。当選・落選の星取りもふくめて戦略を。
               ── 吉田: 「落とすんじゃー」運動の人たちもeシフトに加わっているので一緒に考えていきます。

              河合理事:「脱原発基本法」が衆議院で継続審議になっている。選挙も大事だが、原子力基本法の第1条が「原発推進」であることが根源的問題、これを変えなくちゃ。


              14:26
              (7)佐藤大介(ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン
              「福島原発事故の全容をアジアに伝える ── 脱原発に向けたアジア連携構築」

               (助成金額: 30万円)
              • インドのジャイタプール原発計画(Areva、計900数十万kW、世界最大)こちらがインド反原発の焦点であったが、昨年からクダンクラム原発(ほぼ完成、ロシア製)が前面に。
              • 昨年7月・8月にNNAFを東京+福島+広島+祝島で開催、インドからはウダヤクマール氏。
              • 氏の帰国直後8/16から、クダンクラム原発反対のハンストなど大規模な反対闘争(非暴力)が盛り上がる。ピケ張って工事止めた。去年運転開始予定がずっと遅れている。反対運動への弾圧も強まってきている(死者2名)。ウダヤクマール氏にも200件以上の嫌疑で逮捕状。インドのマスコミも大きく取り上げている。
              • まだ燃料棒は装荷されていない。
              • 福島事故後のアジアでのマスコミ報道。「たいしたことはなかった」「もうおさまった」
              • NNAF2011の東電交渉で東電は「輸出には参加しない(出資しない)」と言明していたが、その後、二転三転している。
              • NNAF2012は韓国で開催(原産サミットへの対抗)。コリ原発がSBOをおこす、サムチョク原発の新計画が発表されるなど動き
              • インドネシアのムリア原発計画のほかマドゥラ島など新しい立地計画も出て、抗議運動も展開。
              • 大飯の再稼働に対するアジア各地でのアクションも。
              • 台湾ではNNAF2011について公共放送局で5日間連続特集で扱われた。
              • 輸出先のベトナムにもベトナム語で福島のことを伝えるパンフなど作った。
              • モンゴル(予定地マルダイ)核廃棄物処分場、日本からの原発輸出した国(ベトナムなど)から使用済み燃料をひきとるパッケージの行き先としてモンゴルが想定されている。

              <質疑応答>
                石巻の日下氏: モンゴルの計画は中止になったかと思っていたが?
                 ── 佐藤: 昨年、国連でモンゴル大統領が「外国の廃棄物は受け入れない」と発言したが、モンゴルのウランを輸出した場合は「外国の廃棄物」とは見なさない、という落とし穴。ウラン開発と使用済み燃料受け入れがセットにされてしまう。国家予算に核施設建設の項目が入っている。

                奈良本英佑氏: ヨルダンへの輸出計画は? 建設予定地は、水のない砂漠で、地震帯の真上でもある。下水処理の水を使うという無茶な計画。あれはどうなった?
                 ── 佐藤: ヨルダン国会では反対の声が強い(反対決議もあがった)が、国会の知らぬかたちで計画進行している。予断をゆるさぬ状況。反対運動は強い。


                14:50 <休憩>


                15:00再開
                (8)川崎哲(ピースボート共同代表、「脱原発世界会議」実行委員会)
                「「脱原発世界会議 2012 Yokohama」の開催 ── 福島の経験を世界の市民と共有し、教訓と行動提言を生み出す」

                 (助成金額: 350万円)
                • 2011年9月から準備、2012年1月14・15日にPacifico横浜で1万人規模の国際会議を開催(ネット視聴をふくめて10万人参加)。6NGOが連携、ピースボートが事務局を担った。
                • 福島事故を受けて日本がどのような方向に向かうのか ── 世界的なインパクトを持つ。
                • 会議の概要を紹介するDVD(60分) ── 海外ゲストの福島視察(バス2台、飯舘・南相馬)、「ふくしまの部屋」(福島からの参加者と一般参加者が直接はなしあう場の設定)、「海外ゲストと話そう」(海外ゲストとの車座になっての直接のやりとり)、子ども達の積極的参加(子どもPRESSなど)、が今回の会議の特色。
                • 専門家どうしが話し合ういわゆる「会議」とは違う形を積極的に盛り込んだ。もちろん、専門家も大勢来て、会議部分も充実していた。
                • 会議の成果: 世界宣言と行動ネットワークの結成、311一周年に飯舘村の長谷川さんが欧州議会に招待された。南アでは「脱原発アフリカ集会」(やはり311に開催)。脱原発首長会議の結成。

                <質疑応答>
                  吉岡顧問: 政府事故調の委員をしていたので出ない方がよいとの判断で出なかったが、良い会議だったと聞いている。中国とのネットワークつくりは?
                   ── 川崎: 会議では東アジアのセッションもあった。当面、日本と韓国の連携が中心になって活動進めるが、中国・台湾の動きも巻き込みたい。

                  瀬川嘉之氏: 反省点は?
                   ── 川崎: 大イベントなので運営上の問題(とりわけ準備期間が短かったことに伴う問題点)は多々あった。昔から原発のことに取り組んできた人と311後に取り組み始めた人たちとのあいだで、色々な差もあり、十分連携できたのかどうかは反省点。政府の「安全策」への監視・対抗も必要。12月には東京・福島で大きなアクションをすべく準備中。

                  河合理事: 世界の原子力ムラが連携している。きっちり対抗表現をしていかないと。総力をあげて頑張ってほしい。

                  大沼委員: 大規模な会議でおカネもかかっている。市民の運動として、そこでの倫理性などをどう保つ?
                   ── 川崎: 費用の大半は会場費(Pacificoは高い!)とゲスト旅費。お金をかけるなら、まず福島への支援という声ももちろんあった。パブコメや官邸前デモに見られるように、ある種の規模を実現するというのは社会運動としては大切であるし、正当な取り組みのあり方。(5400万の出費、数百万の赤字)

                  細川理事: 欧州議会の積極姿勢を、日本の国会への働きかけにむけるべき。戦略は?
                  ── 川崎: 横浜会議の段階では、政党との厄介な関係をひきこみたくなかったので国会議員よりも首長の参加を重視した。欧州の自治体首長会議(反核、自然エネルギーなど)との繋がりもでき、また会議後、日本の国会でも「ゼロの会」など超党派組織もできてきたので、次に国際的にしかける際は、これらの連携を重視していきたい。



                  15:30
                  (9)高田久代(グリーンピース・ジャパン
                  「原発フリーの夏プロジェクト ── 原発再稼働問題の焦点となっている関西電力大飯原発周辺自治体への緊急キャンペーン」

                   (助成金額: 300万円)
                  • 福井県庁の裏のアパートに「福井アクションセンター」を開設、駐在員を置いた(高田)。現地の人と連携したアクションをおこなった。
                  • 距離でみると、大飯原発の「地元」は福井ではなく京都・滋賀(福井市は60キロ圏外)。福井の人口も産業も政治の中心も、実は原発から遠い(少なくとも京都市のほうが近い)。
                  • 活動目的: 再稼働阻止、3月定例県議会を焦点に、「地元合意」の阻止、県が強引に「地元合意」をとりつけることを阻止
                  • 活動内容: 議会傍聴(ストップウォッチプロジェクト)、ドイツ専門家を呼んで脱原発・自然エネの講演、紙風船による拡散予測調査、情報公開請求(SPEEDIなど)、住民意識調査、福井の若者の声の発信。県の原子力安全専門委員会の傍聴。
                  • ストップウォッチ・プロジェクト 傍聴席が満員になったのは県議会史上初! すべての委員会・本会議を傍聴。原発について話された時間を計測。議論の中味をみると、状況確認だけで、どうしていくかという話はほとんど全くされていなかった。
                  • 原発やめてどうするんだ、という地元の疑問に答える企画。トーマス・ブリュアー講演(グリーンピースの自然エネ担当、元ドイツ銀行)
                  • 紙風船調査では、24時間で埼玉県にまで飛ぶことを確認。ヘリウムをいれて3時間で抜けてしまうので、そのあとは風の動き。とばした際の風向と最終的にたどりついた方向とがしばしば違うことも分かった。SPEEDIによる拡散予測を非立地県は入手できない。
                  • 再稼働をめぐる意識意識: 福井・京都・大阪・滋賀・福島の住民を対象に実施。福井では経済よりも安全性を気にしていることが判明。
                  • 福井の若者の声をUstreamで発信。ツイッターと連携。
                  • 県の原子力安全専門委の傍聴。公開はされているが中継されていないので、各委員の発言を書き留め、紹介。全国各地から委員あての直筆の手紙を出してもらうアクション。
                  • 成果: 原発フリーの2ヶ月、「地元合意」無しに再稼働が進んだという認識が全国に伝わった。
                  • 地元の活動家からは、「原発も老朽化したけど自分たちも老朽化してるんだよ」という声。福井の若い人のアクションが動きだしたことに大きな意義。
                  • 今後はおカネの流れ、企業のあり方などを追及。福島への支援も進める。

                  <質疑応答>
                    瀬川嘉之氏: 防災をどう考えるか?
                     ── 高田: 現地に行ったら防災が不可能であることがよく分かる。若狭の原発はすべて半島の先っぽ。大飯原発では、住民の避難訓練は311後、おこなわれていない。地域住民がどう逃げるか、まったく決まっていないまま「安全確保」とされてしまっている。

                    大沼委員: 風船の単価と回収率は?
                     ── 高田: ゴムより紙が高い。特注品なので市販はしてない。その場でヘリウムをいれて飛ばす。

                    河合理事: 原発をやめてどうするかについて地元の声は?
                     ── 高田: たくさん聞いた。嶺南に産業がないというもともとの状況、定検での雇用と助成金への依存。原発ゼロと同時に助成金一気にゼロではなく、一定の時間幅で無くしていくようなプランを提案する必要あり。
                     ── 細川理事補足:  滋賀県の防災計画見直しと放出シミュレーションについて。

                    河合理事: 青山貞一さんが開発した放射能拡散シミュレーションプログラム(10万円で販売)を推奨します。
                    大沼委員: 岐阜市民グループが敦賀から飛ばしたゴム風船は多く岐阜県内(一部は名古屋)に落ちたので、それを受けて、岐阜県としても独自プログラムでシミュレーションした。ヨウ素剤も購入した。各県の放射能測定担当者は、毎年、放医研でSPEEDIの研修を受けている。それを利用できないか。やはりSPEEDIのほうが青山プログラムとは比較にならないスケールなので、国民の税金で作ったものだからなるべくそれを使えるようにしたい。


                    (10)後藤政志(APAST
                    「「非政府系」科学者・技術者の結集による福島原発事故の検証と、NPO法人設立による永続的な活動体制の確立」

                     (助成金額: 300万円助成)
                    • 各事故調の報告、それぞれの立場により中味ちがう。
                    • APASTの立ち上げとほぼ同時期、国会事故調が起動。APASTの関係者の多くが国会事故調の委員や調査員として関わった。事故調はそれとして、非政府系の専門家による総合的検証をする仕組みは必須。
                    • 科学技術へのAPASTの視点 ── 地球から、地域から、未来からの3つ。コストパフォーマンスだけで見るのでなく、安心か、持続可能か、長く使用できるか、地産地消、廃棄物の行方、地球環境汚染などをチェックし、命を脅かさない科学技術を考える。
                    • 福島第一の事故原因の究明(地震による構造破損、格納容器の圧力抑制機能の喪失 [ スロッシングのことは設計段階では全く考えていなかった ]、など) → APASTでスロッシングのシミュレーション=ストレステスト(動画)、国会事故調の報告書に反映されてます。

                    <質疑応答>

                    河合理事: 2号機の爆発との関係は?
                     ── 後藤: 圧力上昇は関係あるが、損傷の箇所や度合いが分からないので確実には言えない。水による圧力抑制機能が担保されないと沸騰水型の格納容器はだめ(マーク I にかぎらず、II でも III でも ABWRでも)。

                    藤井理事: ストレステストはシミュレーションなので実証はできない。それをどう考えるか?
                     ── 後藤: 安全解析の前提はフェールセーフ、原発ではそうなっていない。

                    吉岡顧問: 議会も「鉄の三角形」の一環なので、独立性ということは言えない。
                     ── 後藤: 原子力基本法が「推進」を前提にしていることと安全確保とは本質的に矛盾する。技術の原点からすると

                    日下氏: 基準地震動が現実の地震によってどんどん超えられてきた事実は大変な事態だと思うのだが。
                     ── 後藤: 推進側は「絶対安全」は無いのだ、という開き直りから「多層防護」の発想に逃げ込もうとしている。「五重の壁」は平時のバリアにすぎず、事故時には格納容器以外は役に立たない。それなのに、格納容器が壊れたからといって今更「多層防護」を言い出すのは意味ない。格納容器にベント弁をつけるということの矛盾を深刻に考えないといけない。どうしても安全な原発を作れということだと、格納容器の設計を一からやりなおして、はるかに巨大な容器をつくるしかない。もちろん原発のコストはその分余計にかかる。



                    16:38
                    高木久仁子(高木基金事務局長)挨拶

                    16:40 終了、撤収。参加者数57。