2014年8月15日

【Nuke】川内原発パブコメ

 パブリックコメント(パブコメ)として提出した意見を公開します。


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www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu140716.html 

案件番号 198252311

案件名: 九州電力株式会社川内原子力発電所1号炉及び2号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集について

所管府省・部局名等: 原子力規制委員会 原子力規制庁 原子力規制部 安全規制管理官(PWR担当)付
電話: 03-5114-2113(直通)

意見・情報受付開始日: 2014年07月17日
意見・情報受付締切日: 2014年08月15日

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以下、細川が提出した意見(5通)


パブコメ(その1)
受付番号 201408150000286322
提出日時 2014年08月15日15時34分


 第180国会における「原子力規制委員会設置法」の参議院環境委員会での可決時(2012年6月20日)の付帯決議の第16項に、原子力規制委員会の任務として、「過去の地震・津波等の検証を含めた常に最新の知見を集約できるようその運用体制を構築し、その結果を安全規制に反映すること」とある。この委員会決議に対し、当時の細野環境大臣は、決議の趣旨を十分に尊重し努力する旨、約束した。

 この観点から、福島第一原発事故の検証およびそこで得られた知見を原子炉の規制基準に反映させ、その厳格な適用を担保することが、原発再稼働の審査にあたって、最大かつ不可欠の要件と言うべきである。

 しかし、福島第一原発事故炉の現場においては、いまだ検証のための現場確認すら不充分にしかできていない状況にあり、複数の事故調査委員会による事故原因および進行プロセスについての見解も重要な点での不一致が目立つ。東京電力による事故解析においても、事故後3年以上を経てなお不確定要素が多く残り、メルトダウンの様態(冷却喪失の機序、炉心溶融の時間、溶融量、当時とられた対応策の効果の有無または度合い)が明らかになっていない。したがって、新規制基準において、メルトダウンをどの程度ふせぐことができるのか、あるいは、メルトダウンが発生した際にとられる対応策がはたして効果を有するのかどうか、確実に判断することはできないと考えられる。

 したがって、原子力規制委員会としては、福島第一原発事故の検証を徹底的におこなうことが第一であり、それによって明確な知見がえられ、あるいは、複数の異なる見解についての比較検討を充分におこなった後に、再度、規制基準を改定すべきである。この作業をぬきに原子炉再稼働の審査をおこなうことは技術的科学的に不可能である。

 上記の付帯決議の第17項には「過去の原子力行政において事故やトラブルが隠蔽されてきたことへの反省に立ち、全ての情報を速やかに公開することを旨とすること」とあり、また、第18項には「原子力発電所の再起動については、「事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならない」との目的に照らし、万が一の重大事故発生時への対応策も含め<中略>原子力規制委員会において充分に検証した上で、その手続きを進めること」とされている。福島第一原発事故の徹底検証を放置して原発再稼働の審査手続きを進めることは許されない。

(1015字)

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パブコメ(その2)
受付番号 201408150000286489
提出日時 2014年08月15日16時10分


 第180国会における「原子力規制委員会設置法」の参議院環境委員会での可決時(2012年6月20日)の付帯決議の第19項に、原子力発電所の事故を想定した防災対策について「実施機関及び支援機関の役割、責任について、法令、防災基本計画、地域防災計画、各種マニュアル等において明確にするとともに、これに必要な人員を充分確保すること。また、これらについて、その妥当性、実行可能性を確認する仕組みを検討すること」とある。福島第一原発事故においては、事故炉の圧力容器の破壊を回避する手段としてベントが実施され、大量の放射性物質を含む炉内ガスが放出されたが、この措置が住民の避難状況を確認しないままおこなわれたため、多数の住民がベントに由来する放射性物質の降下により被曝する結果となった。

 川内原発の再起動にむけた基準適合審査は、あくまで住民の安全確保を最大の目的としておこなわれるものである以上、過酷事故時の技術的対応策と住民避難をふくむ防災計画の実行可能性との整合性・連係性を充分に練り上げたものでなくてはならない。

 上記決議の第19項には、「地域防災計画策定において安定ヨウ素剤の配布等を含めた住民等のニーズに対応した仕組みを検討すること」との要求事項もあるが、計画そのものを策定するのは地方自治体の責任であるとしても、その妥当性・実行可能性の確認、各種マニュアルの精査は原子力規制委員会において責任をもっておこなうべきである。

 上記「住民等のニーズ」において特段の配慮を要するのは病院、養護施設、介護施設など、いわゆる避難弱者の安全がどのように確保されるかである。福島第一原発事故においては、事故炉の状況がまったく住民に知らされず避難計画も実効性・実行可能性を欠いたものであったため、とりわけ避難弱者において多数の犠牲をもたらしたことを厳しく肝に銘じなくてはならない。注水所要時間、ベント所要時間などの想定を避難計画と無関係に計算して備えていても、福島の悲劇の再来を防ぐことはできない。

 原子力発電技術は、その過酷事故がもたらす広範で深刻な影響に鑑み、防災計画との実行可能な連係までもがその「技術」に求められる要件であり、計画の整備と実行可能性の明確な検証がなされるまで原子炉の起動は許可されるべきでない。

(959字)

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パブコメ(その3)
受付番号 201408150000286926
提出日時 2014年08月15日17時43分


 本件の審査は、2013年6月に策定された「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」(以下、新規制基準と略記)への適合の可否についておこなわれるものである。原子力規制委員会の田中委員長は、あくまで新規制基準への適合性を問う審査であって、適合したことが安全の保証とはならない旨、たびたび言明しておられるが、そもそも新規制基準が策定されたのは福島第一原発事故によって破綻をきたした従前の規制基準(以下、旧基準という)の再整備であったことを踏まえれば、今回の適合審査の合否は、新規制基準に適合していれば福島第一原発事故のような事態は繰り返されないということが保証できるかどうかにかかっている。

(福島第一原発事故をはるかに上回る事態 ── 今やそれも想定外とはしえない ── に対してはどうか、という点も当然問題になるが、いまここではその点はしばし置く。この点は別意見として、別途提出したい。)

 福島第一原発事故の事故プロセスの解析を続けている東京電力は、本年8月8日の記者会見において、事故炉のメルトダウンの進行について従来とは大きく異なる解析結果を発表した。そこでは、新規制基準では前提とされていない新たな重要な知見も少なからず含まれており、川内原発の再稼働の可否をめぐっても考慮すべき点が多いと考えるべきである。

 たとえば、福島第一2号炉について、事故時の注水によって却って水素ガスの発生量が増え、それによる炉内圧力上昇で注水の継続が困難になったとの解析が示された。だとすれば、電源の確保、消防車の確保、給水系の確保だけでは事態をコントロールできない恐れがある。旧基準では、各種の非常給水系は炉心がメルトダウンしないことを前提とした温度条件等にもとづき設計施工されていた。福島第一でメルトダウンが実際におきた状況下での給水の実効性について、配管損傷の実態確認も含め、根本的に検証し、評価しなおすことが必須である。その結果次第では、原子炉および関連設備の設計自体を変更する必要もあるだろう。

 こうした検証や評価がなんらなされないまま、新規制基準では「メルトダウンがおこる」ことを前提としつつ、メルトダウンがおきないことを前提に設計された構造のまま、原発再稼働の可否を「審査」しようとしている。技術的・科学的にみて深刻な問題を孕んでいる言わざるをえない。

 なお、過酷事故時における格納容器内の水素密度に関して、日本原子力学会での最近の報告で、ジルコニウム・水反応による水素ガス発生に加え、鉄と水の反応による水素発生の可能性が論じられている(倉田ほか 2013「軽水炉過酷事故時の破損燃料に与える海水影響の熱力学的評価」日本原子力学会論文誌12(4):286-294)、との指摘が原子力市民委員会の井野博満委員(東京大学名誉教授)によってなされている。このような重要な知見が新規制基準において考慮されていないことも憂慮すべき瑕疵である。

 上に挙げたのはほんの一例であり、福島第一原発の事故解析が未了の段階にあっては、事故再発防止のための充分な知見が得られておらず、拙速に策定された新規制基準によって福島第一原発事故の再発を防止することは技術的に担保されていないと判断される。

 なお、新規制基準に見られるその他のさまざまな瑕疵については、原子力市民委員会の2013年6月の緊急提言において列挙されているので、あらためて検討されるよう要望する
( http://www.ccnejapan.com/?page_id=2063 )。

(1492字)

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パブコメ(その4)
受付番号 201408150000287207
提出日時 2014年08月15日19時01分


 さきに提出した意見(受付番号286322および286926)においては、新規制基準それ自体に問題があり、それによって原発の再稼働の可否を審査しても、福島第一原発事故のような事態(さらにはそれを上回るような災害)を防止しえないことを述べた。

 以下、本意見においては、川内原発九州電力の申請が新規制基準にも適合していないことを指摘する。

 新規制基準は「発電用原子炉施設は、重大事故に至るおそれがある事故が発生した場合において、炉心の著しい損傷を防止するために必要な措置を講じたものでなければならない」と定めている(第37条第1項)。しかし、九州電力の申請書で検討されている複数の事故シーケンスにおいて、「炉心損傷防止対策」をとる場合ととらない場合とがある(審査書案 p.126の表IV-1「申請者の重要事故シーケンス等の選定について」を参照)。後者の場合、「格納容器破損防止対策」しかとられていないということが、炉心損傷を防止しえないという以前に、防止するための措置を最初から断念しているということであるならば、明らかに第37条に不適合である。

 これに対して、審査書案は、「これらの事故シーケンスを炉心損傷防止対策における事故シーケンスグループに含めず、格納容器破損防止対策において考慮するとしたことは、設置許可基準規則解釈に則った考え方であることから、妥当であると判断した」(p.122)としているが意味不明である。メルトダウンが進行するような状況においては、設計で想定されていない温度条件や機器の破損が生じ、格納容器破損防止対策が十全に機能しうる条件が満たされない場合があるのではないか。

 また、新規制基準では、格納容器の破損に至った場合において「工場等外への放射性物質の拡散を抑制するために必要な設備を設けなければならない」(第55条)とされる。この拡散の「抑制」については、第37条第2項に定められているように「異常な水準の放出を防止するために必要な措置を講じ」ることが求められる。この「異常な水準の放出」がどのようにおこるか、福島第一原発事故の経験に照らせば、気体による放出のほか、液体による流出がきわめて深刻であり、大量かつ長期的な放射性物質の放出につながることを銘記すべきである。しかるに、九州電力の申請書では、格納容器下部の破損、あるいは原子炉建屋とタービン建屋をつなぐ大小の配管の損傷によって起こりうる放射能汚染水の漏洩・流出という事態が検討されておらず、明らかに上記条項に違反している。

 福島第一原発においては、建屋の地下構造(壁面ないし配管あるいは両者)の地震による損傷により地下水が建屋地下に流入し、汚染水の量を倍加させた。そのことが、事故対応上きわめて困難な事態を招き現在に至っていることは、福島第一原発事故の厳しい経験のなかでも最重要の部類に属することである。川内原発の敷地においても福島第一原発敷地なみの流入地下水の存在が確認されているにも関わらず、申請者がそれに対する対策をとっていないことは、規制基準に対する著しい不適合である。

(1291字)

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パブコメ(その5)
受付番号 201408150000287317
提出日時 2014年08月15日19時41分


 発電用原子炉の起動にあたって原子力規制委員会による許可をえるためには、原子炉等規制法の定めにより、設置変更許可、工事計画許可、保安規定認可がそれぞれ基準に適合し、かつ相互に整合し一貫していることが確認されなければならない。家を建てるときに、設計図と施工方針を見ただけでは、実際の家屋構造の安全性や必要な性能を保証できないように、実際の工事計画の詳細と施工の状況を確認しなければならない。
(もちろん、設計図と施工方針を見ただけで「これではまともな家が建てられない」と判定することができる場合はある。)

 今回公表された審査書案は、設置変更許可に属する事項をもっぱら扱っており、どのような工事でどのような要求事項が達成されるかの方針を確認するにとどまっている。この審査書案をもって、工事計画と保安規定がそれぞれ必要な基準を満たしていることを確認するものとみなすことは到底できない。それでは、申請者が示した方針が具体的な施設・設備・対策等の実体をあらわす数値等の判断材料にしかるべく反映されていることが確認できないからである。そもそも、申請者からは工事計画の実質的内容にかかわる補正が提出される予定とされているが、現時点で未提出である。

 とりわけ、耐震基準が見直されたことに伴う耐震バックチェックは、今回の審査書案では実質的に全く扱われておらず、工事計画認可の申請書において詳細に検討されるところであるが、見直し後の基準地震動に即した詳細解析や補強工事計画の提示がまだなされていない。

 したがって、工事計画と保安規定については、今後別途、原子力規制委員会において具体的かつ詳細に検討する公開の審議を重ね、それをさらにパブリック・コメントにかけたうえで、判断すべきものである。そのような審査を経ずして、当該原発施設の起動の是非に関する科学的技術的に妥当な判断は不可能である。

(789字)

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こちら ↓ も是非ごらんください。
 「川内原発審査書案に対する総合的意見」
www.ccnejapan.com/20140804_CCNE_01.pdf


 「川内原発設置変更許可申請書に対する審査案についてのパブリック・コメント文例」
www.ccnejapan.com/20140811_CCNE_01.pdf


原子力市民委員会 2014年7月9日 見解
「川内原発再稼働を無期凍結すべきである」



『原発ゼロ社会への道
  ── 市民がつくる脱原子力政策大綱』(第2版)
www.ccnejapan.com/?p=3000