2013年7月7日

【Nuke】ACRO代表ボワイエさんのちくりん舎トーク


認定NPO法人「高木仁三郎市民科学基金」(高木基金)主催
   4回 放射能測定活動に関する研究交流会

201377日(日)東京都日の出町「ちくりん舎」にて




フランスのNGOACRO (Association pour le Contrôle de la Radioactivité dans lOuest 西部放射能監視協会
David Boilley(ダビード・ボワイエ)代表のお話


通訳(英語): 青木一政さん(ちくりん舎)
ノート作成: 細川弘明(高木基金)



● チェルノブイリのとき、フランス政府はフランスには放射能は「来ていない」と主張、ドイツは来ていると認めていた。たった10キロのちがいで、放射能が止まった?

実際には、フランス東部が汚染されている。(地図で説明)コルシカ島がとくに高い汚染濃度。

コルシカで甲状腺がんが増えているというレポートが、つい先週でた。コルシカ政府がイタリアの研究所に委託して調査した結果。(リンク → 概要 報告書全篇 )


● ACROは カン市 Caen(ブルターニュ)にある。
ラアーグ再処理工場の近く。毎月、海水をサンプリングして測定。

ACROの2つの役割
  1. 市民による放射能測定・監視(citizen monitoring)
  2. 原発の地元ごとにある local commission(地域委員会)からの調査受託(測定、文献調査など) ※地域委員会については、のちほど説明あり。


● フランスには放射線測定の「中央データベース」ができた。3年前。
電力会社、政府、NGOなどの測定データをすべて集約している。
クロスチェックによる認証をうけた組織のみ、このデータベースに送信できる。
ACROは認証された唯一のNGO
【★青木さん註:上記リンク先(中央データベース)の
トップページのバナーの右端の
Rechercher une mesureをクリック
すると検索ページに飛べます。

●「複雑な問題の決定をするときに民主的な決定をする」ということを目指すのが、ACROの立場。「反原発」団体ではない。
Davidさん自身は反原発だが。)


● ACROの測定体制
ゲルマニウム半導体検出器 3台
トリチウム・液体シンチレータ(ベータ線量計)
ラドンガス測定器

トリチウムは北海岸(再処理工場、複数の原発)ぞいに検出されている。10Bq/L
ヨウ素129は、ラアーグからドイツまでずっと分布

測定の意図さまざま。同じ測定器を持っていても、関心・考え方が違う。
  • 事業者 ── 設備が漏れていないかをチェックをしたい(環境のことを考えているわけではない)
  • 国 ── 環境にどれくらい放射能が拡がっているか知りたい
  • ACRO ── 市民・NGO・自治体からの質問に答えるため


ACROは、ベラルーシでも活動。EUの助成で測定所を設置。


20113月の津波(東日本大震災)のとき、たまたまACRO総会があった。
そこで、通常活動を停止して日本救援の活動を最優先することを決定。日本にラボを作ることを即決、助成金探し開始、日本ラボが立ち上がるまでACROで支援測定(日本の600検体を測った) ── グリーンピースから測定依頼された試料のみ有料測定で、あとは全部無料で測った。データはウェブサイト(acro.eu.org)で公開している。


● 日本に来たら、たくさん市民測定所ができていて驚いた。
チェルノブイリ後のヨーロッパでそんなには無かった。

シンチ(ヨウ化ナトリウム・シンチレーター)は有効だが、すべての質問に答えることできない。ゲルマ(ゲルマニウム半導体検出器、Ge検出器)、尿検査、液体シンチレータによる測定なども必要。


★ 市民による放射能測定の課題
  1. 市民による質問から始めること
  2. 信頼できるデータと専門性を確保すること
  3. すべてのデータを説明つきで公開すること
  4. 政府への影響行使、政策変更を求めること


 政府との関係
  1. 市民ラボ(年300検体くらいが精一杯)は公的機関の代替にはならない。
  2. 公共政策への影響を与えるのが市民測定の役割。
  3. データと解説は(当局からも)信頼されないといけない。
  4. 政府からの認証(quality assurance)をとりつける。
  5. 一方で、独立性は保たないといけない。


● ACROの資金調達 ── 寄附、コンサート、クリスマスバザー、パリ県(île de France)からの助成(県として日本への助成を考えて、ちょうど助成先を探していた → 赤十字とACROにそれぞれ600万ユーロ、まさしくGe検出器の値段)

福島事故後、世界に3社しかなかいGe検出器のメーカーのうち2つ(Canberra、■)は値段をつりあげた。ACROは値段あげなかったところから買った。


● フランスのマッシュルームから100Bq/kg以上の汚染(チェルノブイリ由来)が今でも見つかっている。イノシシ肉もまだ汚染されている。

ACRO(3台)とちくりん舎(2台)で5台のGe検出器。
将来の事故に備えなければならない。将来、大事故がおきたとき、この5台で市民のために最大限の対応をできるよう備えておくべき。



<以下、質疑応答・意見交換>

石森さん(小さき花 市民の放射能測定室・仙台): 市民測定所でいちばん困るのは、お母さん達にどう説明するか。「安全です」と言うのは無責任なので、僕には言えない。

Davidさん: とても難しい問題だ。フランスでは、再処理工場や原発からの放出量を減らすために測定結果をいかすことができる。しかし、日本の場合はすでに放射能が外に出てしまったので、減らすことができない。対応の考え方が違ってくる。端的に言えば、「地元の食品を食べない」という選択があなたにとってどれだけの損失で
 あるか、「その土地を離れる」ことがあなたにとってどれだけの損失であるか、私は決めることができない。市民が自分で決めることができるような情報を与えるのが役割。「離れれば安全」とわかっていても、それによって失うものを無視できない。
 ただ、国際的に確立しているルールは、「被ばくは少なければ少ないほど良い」ということだ。今年5月に発表された、オーストラリアでの大規模疫学調査で判明したのは、CTスキャンによる5mSvの被ばく(医療被ばく)でも子どものがんが増加していた、ということ。
【★ Davidより補足: CTスキャンの被ばくによる発がん
(白血病と脳腫瘍)については
昨年載った論文も参照されたし。】



大沼さん(東海ネット;高木基金) 一介の市民団体であるACROが社会や政府からの信頼性をかちとったプロセスは?

Davidさん: 10年かかった。チェルノブイリのとき、ラアーグ市民がいろいろ調べたら、チェルノブイリ以前の汚染がいろいろと判明した。それを記者会見で発表した。ターゲットはCogema(フランス核燃料公社、当時;現在のArevaの前身)。Cogemaからは、ACROはいつも大げさだと非難された。そこで、ラアーグの地域委員会がクロスチェックをすることにした。ACROの測定結果が他の公的機関で追試されて、正しい測定であることが確認された。それ以降、データそのものは文句いわれなくなった。解釈については今も非難されるが。

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「地域委員会」local commission について
 ── フランスの原子力施設の地元には必ずある。
チェルノブイリ以前から、ラアーグにはあった。
チェルノブイリ以降、全国にひろまった。
も組織されている。
 ── 構成員は、地元政治家、医師会、商工会、
組合、NGO、専門家など。2006年に法律ができて、
地域委員会の権限と予算が強化された。財源は自治体。
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【★細川補足: フランス語では Commission Locale d'Information (CLI )
といって、直訳すると「地域情報委員会」。
Davidによると全国連合の活動は非常に活発。】


細川(高木基金): 地域委員会はそもそも何のために作られたものか? PAなのか、環境配慮なのか、防災なのか?

Davidさん: 事業者からみればPA(核施設を住民に受容してもらうための広報宣伝活動)、市民からみれば監視。自治体からすれば防災の要素もある。地域委員会の存在意義は、立場によって異なる。ACROが直接言うよりも、ローカルコミッション(地域委員会)を通して同じことを言うほうが社会的影響力が大きい。
委員長は地元の政治家なので、その人のやる気しだいで、その地域のコミッションが機能するかしないかが決まる。


Aarhus conventionオーフス条約 1998
 欧州の環境基本条約(国連欧州経済委員会で制定)
この条約により、環境に影響する事案については必ず
・地元住民と協議すること(consult the population
・地元住民の意見をきくこと(take the opinion of the population
が義務づけられている。国境沿いの場合は、隣国の住民の意見も聞かないといけない。(独仏国境の原発のケースなど。)


● ACROは常勤スタッフ5名、年間予算は25万ユーロ。
政府環境省・原子力規制委員会・30の自治体などからの助成が3分の1、残りは、受託調査収入と寄附金でまかなう。市民からの測定依頼には無料で応じる。環境調査(測定、データ提供)について自治体や政府から助成をとりつける。


14:40 Davidさんとのセッション、終了。拍手・拍手・拍手 o(^-^)o

 参加者、約30名(北海道、東日本各地、名古屋、京都、岡山より)
全体で約5時間の交流会プログラムのうちの約1時間(13:44-14:40)でした。


2013年3月16日

【Env/Nuke】高木基金 公開プレゼン


高木仁三郎市民科学基金 
2013年度(第12回)国内枠助成
公開プレゼンテーション

2013年3月16日(土)
於:南部労政会館(大崎)第5・6会議室


このノートは当日の会場からの中継ツイートに若干加筆したものです。
高木基金による公式記録ではありません。文責は、細川個人にあります。
今後、発表者関係者からの指摘をまって、補足や訂正がおこなわれることがあります。
レイアウトやリンクなど、まだ不備なところがあります。
発言者のお名前がわからない箇所があります。ご教示をお願いします。 
 

【更新記録】
2013年3月18日: 掲載
2013年3月20日: 瀬川嘉之さんのご教示をうけ、3ヶ所修正補筆。





以下のノートで「委員」とあるのは高木基金選考委員、「理事」は高木基金理事、「顧問」は高木基金顧問(かつて選考委員を6年勤めた方)


9:30開始
・司会進行=菅波さん(高木基金事務局)、経緯説明と選考手順
 15分プレゼン+10分質疑応答、計25分ずつ

(「調査研究助成」に応募した53件のうち20件が書類選考を通過。申請額が50万円以上の19件が本日のプレゼン(公開審査)にかかる。新規申請が15件、継続申請が4件。これらとは別に「研修奨励」枠があり、応募4件のうち3件が書類選考を通過、2月に面接審査をおこなった。なお、この3件のうち2件は「調査研究助成」枠での応募だったが、書類選考での評価に応じて「研修奨励」枠に振り替えて審査することとした。
 「調査研究助成」「研修奨励」とも、本日のプレゼン後にひらかれる理事会において、助成の可否と金額を最終決定する。)
 


基金代表理事の河合弘之弁護士の挨拶
  • 高木さんの「タネ銭」を市民がひきついで育ててきた日本では希有の財団。原発事故で危機感をもった市民の寄付が増えている。
  • 5000万円という大口の寄付もあり、それについては目に見える成果のでるまとまったプロジェクトに使ってほしいとの指定なので、日本の英知と良心を結集して「原子力市民委員会」を立ち上げるべく鋭意準備中。
  • 社会運動としての調査研究助成という姿勢でやってきた。その一環として一般市民の参加のもとに公開プレゼンで助成対象を選ぶというかたちをとっている。よろしくおねがいします。

出席役員紹介


選考委員(※印の委員は、一般公募による任用)
  山下博美(委員長;名古屋大学・環境学研究科 特任准教授)
  大沼淳一(元・愛知県環境調査センター 主任研究員)
  遠藤邦夫 ※(水俣病センター相思社)
  鈴木謙 ※(東京大学・農学生命科学研究科 教授)
  貴田晶子(愛媛大学農学部 環境計測学研究室 客員教授)
  青木将幸 ※(青木将幸ファシリテーター事務所 代表)

本日は出席できないが書類選考に加わった選考委員 ── 藤原寿和(化学物質問題市民研究会 代表)、竹本徳子(東北大学 生命科学研究科 特任教授)

理事  河合弘之(代表理事、弁護士)
  高木久仁子(基金事務局長)
  松崎早苗(元・産業技術総合研究所 研究員)
  堺 信幸(元・岩波書店 編集者)
  中下裕子(弁護士、ダイオキシン環境ホルモン対策国民会議 事務局長)
  清水鳩子(主婦連合会 参与)
  藤井石根(明治大学 名誉教授)

  細川弘明(京都精華大学 教授)

このほか、本日欠席の理事 ── 嶋津暉之(水源開発問題全国連絡会 共同代表)、福山真劫(原水爆禁止国民会議 事務局長)

顧問】 
  吉岡斉(九州大学 副学長、元・選考委員長)

本日出席できなかった顧問(いずれも元・選考委員) ── 長谷川公一(東北大学 文学研究科 教授)、小野有五(北海道大学 名誉教授)、平川秀幸(大阪大学コミュニケーションデザインセンター 准教授)


9:45-
(1)石澤春美さん(カネミ油症被害者支援センター)
「カネミ油症被害者調査(未認定者、死亡者、次世代被害)」 
 

  • 高木基金の助成を5回受けて、調査をすすめ、被害の存在を国に認めさせることができた。2つの法律ができた。昨年8月に「救済法」成立。
  • 裁判もおわって決着したこと、というのが国の態度。しかし当初のPCB汚染という位置づけではなく「ダイオキシン被害」としての見直しが必要。
  • 未認定者が多いということが問題。2千人足らずしか認定されていない。
    調査してみると、多くの未認定者の存在が明らかに。おなじ食事をとっていた家族内で認定/未認定がわかれたケースも目立つ。救済が必要。国にずっと要望してきて、救済法には未認定者への対応も一部含まれた(同一家族の場合のみ)。
  • さらなる解明と救済のため、未認定者に焦点をしぼって調査を続けたい。
    聞き取り調査で、若い人の死亡(次世代被害)のケース多いことがわかりつつある。
  • 胎内被曝のケースも認定されない。生き延びられなかった赤ちゃんが多いが、生き延びた子は障害に苦しみ、それが認定されない。

以下、質疑応答 

遠藤選考委員: 水俣病では原田医師の研究で胎児性の被害が認められるようになったが、油症では政府はなぜ認めないのか。
石澤さん: なぜ胎児性が未認定なのか、理由は明らかにされていない。

フロア男性より質問: 救済法制定にあたってのパブコメに対する国の回答は?
石澤さん:「調査します」とか形ばかりの応答、あまり実質的な答えはない。

松崎早苗理事: 国による研究について情報公開を求められたと思うが、その後は?
石澤さん: 情報公開請求は続けているが、基準の根拠はなかなか明らかにされない。

河合理事: 救済法では「これで最後、これ以上は補償しない」というような条件がついているか?
石澤さん: それはない。被害の全貌はまだ明らかでので、調べていきたい。
瀬川さん質問: 認定委員会の構成は?
石澤さん: なかなか変えられない。最初に国の研究を担当した医師グループ中心の体制がずっと続いている。これを変えないと、「油症研究班」をまず解体しないと始まらない。いろいろ公害があるなかで、なぜ油症への扱いはこんなに冷酷なのか。明らかにしていきたい。


10:10-
(2)天笠啓祐さん

「隠れ遺伝子組み換え(GM)ナタネおよび交雑種の拡大調査」

  • 日本に輸入されているGM作物は主に4つ(大豆、トウモロコシ、綿、ナタネ)いずれもタネの形で入ってくる。
  • こぼれおちたのが自生し、交雑種も生まれている。
    検査キットで市民が調査しやすい。全国47都道府県で自生を確認。
  • ラウンドアップ(モンサント社)、バスタ(バイエル社)の両方に耐性をもつ交雑種が生じている。これは国も把握していなかった。市民の調査で発見された。
    こぼれおちたタネをカラスなど鳥がついばんで、あちこちで糞をすることで拡散しているようだ。
  • 自生の抜き取り隊を
  • 震災の影響で、輸送ルートが変わり、これがGM汚染の拡散という結果を招いている。(あちこちでタネがこぼれている。)
  • 組換え遺伝子をもつが形質が発現していない「隠れGM」のナタネが存在。この分布実態を明らかにしたい。
  • 各地の報告会、全国報告会もひらき、市民が情報共有し、自治体ごとの対策につなげていきたい。
    国内のGM規制法である「カルタヘナ国内法」が弱すぎる。
  • GMOフリーゾーンの世界大会で日本の市民調査の結果を報告した。それがドイツ、スイスなどでの自生調査につながり、欧州でも自生・交雑が確認された。
    日韓共同での市民による自生調査も企画。
  • 昨年、インドでの生物多様性条約会議サイドイベントでも報告した。
  • 以上、天笠さんの発表。質疑応答にはいります。

以下、質疑応答 

吉岡顧問: 有効な対策は?
天笠さん回答: カルタヘナ議定書の強化が必要。食品表示の改善も必要。EUは全食品全成分表示。米国はまったく表示がないが、州政府レベルで表示制度をつくる動き(30州)。

鈴木譲選考委員: 私は魚の研究で遺伝子組み換えもするが、外に逃げないよう厳重な注意が求められている。組換え種子のずさんな扱いはショック。遺伝子検査は外注の計画でお金がかかりすぎているので、市民自身が検査する態勢を整えていく必要がある。

天笠さん回答: ナタネは2つの遺伝子の検査ですむが、トウモロコシだともっと多くなる。検査は農民連のラボへの委託で、通常の半額で設定してもらっている。農民連のラボを支えることも重要。

大沼淳一選考委員:「隠れGM」は検査精度の問題では? 検査会社とどのように検討しているか?
天笠さん回答: 検査キットの精度はかなり高い。米国が輸出するときに使っているのと同じもの。

大沼委員: 遺伝子があっても蛋白質が発現していない、ということは除草剤耐性もない、ということ?
天笠: その時点ではそうです。


(3)高田久代さん(グリーンピース・ジャパン)

「原子力損害賠償法改正プロジェクト」 
  • 昨年、福井アクションセンターの活動を高木基金に支援してもらった。感謝。
  • 原発にもメーカー責任を。大事故をおこしてもメーカーに責任が問われないという現行制度。
    福島事故の被害総額20兆円という推計、すでに税金2兆円以上投入。さらに国民の税金で負担していくことに。メーカー責任をきっちり問う制度ができれば、事故の抑止にもつながる。インドではそういう法律があるので、米国メーカーは進出に慎重。
    東芝は、福島原発のメーカーだが、いまだに原発ビジネス拡大を公言している。
  • 原子炉メーカーは「原賠法」によって守られている。今から52年前の法律。原発促進のための法律。8月末に改訂の時期、ここにあわせて活動を集中させていく。
    メーカーの無責任を広く知らせる。街頭調査では8割以上の人が福島原発のメーカーを知らない。
  • 東電の株主への働きかけたい。メーカーへの賠償請求を東電にさせる。
  • 現在、約20ヶ国で署名活動、昨夜時点で9万筆。メーカー責任を求める署名。
 ーーー 
(当日のツイート連投は、ここで予想外のバッテリー切れのため中断)
 ーーー 

  • 日立・東芝・三菱への質問状、面会も求めている。メーカーは福島事故に対する見解を発表していない。海外のメーカーへも手紙送っている。
  • 『ポスト原子力への3大課題』レポート

以下、質疑応答

吉岡顧問: メーカー責任を問うのは中々難しい。裁判で勝たないとならない。Mark I が原因かどうかすら議論の生じる余地がある。勝つには何が必要か?(東電救済スキームである)支援機構法については、どう考えるか?
高田さん: 難しいのは事実。だが、原賠法は原発を止めるための本丸だと私たちは認識している。第4条がある限り、100%裁判は負ける。8月が見直し時期なので、たとえ今回変えられないとしても、変える足がかりをつけるチャンスととらえたい。


吉岡顧問: 機構法は廃止してもよい筈だが。
高田さん: それはそうなのだが、こんな事故を起こしてもなお「原発ビジネス」を推進するという企業姿勢を問いただしたい。


山下博美委員: 申請書に現地の放射能調査が入っているのはどういうことか?
高田さん回答: 解決にほど遠い状況だということを明らかにしたい。


フロア男性: 米国のサンオノフレ原発で三菱が損害賠償請求されているが、どうして請求が可能なのか?
高田さん回答: いま詳細を調査中。プライス・アンダーソン法の機能で可能なようだ。


フロア別の男性: 8月までに法改正の可能性は?
高田さん回答: 政治的に芳しくない状況。7月の参院選でどうなるかにもよる。6月末までに改正の言質(文科相の国会答弁)を引き出したい。それが原賠法見直しのマイルストーンになる。


 

11:00-
(4)中西四七生さん(たまあじさいの会)
「日の出町ゴミ最終処分場・エコセメント工場からの有害な化学物質や重金属、及び放射能による周辺環境への汚染の実態調査」 
 

  • 焼却灰をそのまま埋めるということは、もうしにくくなっている。そこで「エコセメント」工場ということになった。排ガスが心配。山間地に立地する郊外施設であるとの認識が必要。
  • 残渣の放射能が高い。汚染物質のトレーサーとして放射能に注目。これまで(施設から排出される)重金属や化学物質を追跡してきたが、測定・特定が難しかった。推測される汚染経路や汚染メカニズムを放射能で証明できるかもしれない。
  • 排水は多摩川に流入し、砧や砧上の取水口から上水へ。
  • 飛灰は2400〜3000Bq/kg、焼却灰は300。バグフィルターの粉塵集塵率、環境省は99%などと言ってるが、払い落としによる放出を考慮していない。払い落としをしないとフィルターの機能を保てない。
  • エコセメント化施設の排ガス中の放射能、2Bq/kg以下だとND(検出限界以下)だが、排出量から計算すると1日あたり1360万Bq未満はNDとされてしまう。
  • 夜間ひやされた灰が日中の斜面上昇流で尾根を登る。他にダウンウォッシュなどの現象もあり、北側尾根で0.26uSv/hにもなっている。南側の青梅市0.06uSv/hよりずっと高い。
  • 北尾根側で野鳥の個体数が明らかに減少。
  • 汚染物質は周辺環境のなかで循環する。土壌のBq濃度でそれが確認できそう。

以下、質疑応答


鈴木委員: 疫学的な分析が弱い。
中西さん回答: ガン死については、風上/風下で2%違うという統計はある。学校保健統計で喘息罹患率の動向をみると、このかん全国で4%増加しているが、青梅市は15%増(n=5600)だ。


細川理事: セシウムをトレーサーにするという発想は面白い。ただ、セシウムと他の汚染物質が環境中で同じ挙動をすると言えるのか?
中西さん回答: キルンの中では塩化セシウム。粉塵はいろいろな物質が固まりになって出てくる(ので、一緒に移動する)。


貴田委員: セメント製品にはいるBq数は? 排出されるよりそちらが多いのでは?
中西さん回答: エコセメント工場周辺が、空間線量率も土壌濃度も特異的に高い。



 

11:30-
)酒井明子さん、鈴木薫さん(いわき放射能市民測定室たらちね)
「放射能汚染・低線量被ばく地における放射能測定の活動と記録」 


  • 食材測定体制の説明
  • いわき市の戸外0.1uSv/h、測定室内 0.05uSv/h、測定器のまわりをペットボトル水の箱で遮蔽して 0.05-0.04uSv/h
  • これまで3,899件(穀物1,355、野菜978、他)
  • 土壌、稲わら、籾殻などのセシウム測定も 285件(畑土185、庭土37、資材35、他)
  • 砂浜の測定も始めた。30cm深の汚染状況解明が今後の課題。
  • WBCも設置、2533名を測定。未成年が多い、逆に20代は受診者がとても少ない。
  • 木村真三さん、今中哲二さんらの講義を公開、最近は小さい子を連れて聴きにくる方も多い。
  • 甲状腺エコー検診も始める予定。日立メディコ機(県の2次検査で使うのと同機種)。島根大医学部の野宗先生と北海道がんセンターの西尾先生が担当。
  • 砂浜汚染では新状況も。当初は表層より下の方が(汚染濃度が)高かったのが、ふたたび上の層が高くなったりしている。放射能はまだ降っているということ。

以下、質疑応答

大沼委員: 砂は重いわりにはセシウムがあまり入っていかない。泥質を見て行かないと。甲状腺は臨床検査技師のショット(静止画撮影)では正確なサイズがとれない。県の検査に対抗するうえで注意が必要。
鈴木薫さん回答: 動画データも保存して、受診者にUSBまたはDVDで渡すようにしようと考えている。


鈴木薫さん: 文科省はいわき市ではストロンチウム測定をしていない(してほしいと言ってもしてくれない)ので、自分たちで測るしかないか、と考えている。


瀬川さん質問: 3/12段階でのヨウ素プルームに注意が必要。行動調査はしてますか?
鈴木さん回答: 木村真三さんの助言をうけ、二本松市と同じ書式での調査を試みている。ただ、質問項目など改善の余地はある。

 

11:55-
(6)藤田康元さん(茨城市民放射能測定プロジェクト/つくば市民放射能測定所)
「霞ヶ浦の放射能汚染の実態調査と対策」



  • 複数の市民団体の共同調査計画
  • 湖の西側がホットスポット、流入が懸念。水位データと放射能測定データ照合をすすめる。
  • 行政による観測態勢は貧弱。8ヶ所で5回のみ。流入56河川のうち、当初は24河川しか計測していなかった。市民の要請を受けて、56河川全部測るようになったが各1ヶ所ずつのみ(水と底質)。
  • 短い河川で汚染が高いようにも見える。流入量と蓄積量を把握し、魚・水への影響を見ていく。
  • どうすれば食い止められるかということも追求したい。
  • 行政への申し入れの一方、アサザ基金が市民調査を進めている。
  • 流域全体でのセシウム移動の把握が課題。

以下、質疑応答

糸長さん: シルト分のデータを是非。環境省の採取のしかたは全然だめ。混ぜてしまっている。
遠藤委員: ワカサギの放射能が高いのは何故? それほど泥を吸っていない筈なのに、なぜベクレル数が大きいのか。霞ヶ浦ではいちばんよく食べる魚だと思うので、気になる。
フロアの女性: ワカサギは稚魚を放流していて、霞ヶ浦で育つ期間は短い。卵は諏訪湖などから。
大沼委員: 動物プランクトンを食べている。だからワカサギが多すぎると(植物プランクトンを食べる動物プランクトンが不足して)水質悪化する(植物プランクトンが増えすぎる)とも言われている。底質の採取にはコアサンプラーをぜひ使ってください。また、データとるにあたって、泥と砂の区別は重要。 

 

12:20 昼食休憩。

13:00 再開  
(当日のツイート連投もここから再開)

(7)桃井貴子さん(eシフト)
「脱原発を含むエネルギー・原子力政策実現に向けた政策提言と社会ムーブメントづくり」

  • eシフト http://e-shift.org はネットワーク型、複数の団体が情報共有し、重要課題について声明やアクション
  • MLでの情報交換が活発、市民委員会で議論
  • 地方自治体の取り組みも重視
  • ブックレットをこれまで3つまとめた「再稼働問題」「発送電分離」「東電解体」
  • 政策形成プロセスに市民の意見が反映されるように様々な手法をこころみる。
  • 総合資源エネルギー調査会(経産省)「基本問題委員会」に2011年時点で「あいうえおばた」さん(原発批判派7名)が入って、市民の声が届けやすい状況ができたように思った(政権交代でみな外されてしまった)。・2012夏のパブコメの盛り上がりは画期的だった。「原発ゼロ」が実現可能なものとして認識されるようになったが、安倍政権でちゃらにされてしまった。
  • 原発ゼロの声をもういちど集め直す作業にはいる。アベノミクスに対してゼロノミクスを示していく。

以下、質疑応答

質問: パブコメの数は多かったが内容について分析はされているのか?
桃井さん回答: 分析している研究者(北大)がいて、その結果を共有している。

瀬川さん: 政治運動なので党派との関係は。経済中心の党派にどう働きかけていくか。
桃井さん回答:「経済成長」ひとつとっても考え方は多様。脱成長の主張もあるし、自然エネによる成長を説く人もいる。いずれでも原発ゼロという共通項をさぐっていく。

貴田晶子選考委員: 60団体もネットワークしているのなら、高木基金が助成する必要性がもうひとつ見えない。
桃井さん回答: 60団体みな貧乏です(・_・、) 


13:25-
(8)泊原発の廃炉をめざす会、札幌の菅澤紀生さん(弁護士)と樋口みな子さん
「泊原発の廃炉を実現させるための研究」

  • プレート境界と泊原発の位置関係、活断層の存在、北海道の地形とプレートの動きの関係
  • ただ太平洋側ほど明確な像ではなく、学者のあいだでも異なる見解が見られる。泊原発沖・奥尻島周辺の海底地形はかなり複雑。
  • 北電資料では活断層は何もないことになっている。地形学の基礎資料では明白に活断層分布(『新編 日本の活断層』)
  • 日本海側の断層については、最近、変動地形学の調査が進み始めた。連動の問題も注目されている。
  • 奥尻島(北海道南西沖地震)の階段状地形と津波堆積物、小野有五さん(北大教授、泊原発の廃炉をめざす会・代表)の現地調査
  • 泊原発のすぐ前にも地震性隆起を示す変動地形あり(写真)。渡辺満久教授の調査図版。段丘面の隆起と傾動。
  • 活断層の傾斜と方向を見ると、原発直下にまで伸びている可能性
  • 津波の観点からみた積丹半島周辺の地形の説明。
  • 地形情報を裁判に出せるレベルにするための調査を今年します。
  • 以上、菅澤弁護士による説明。つづいて、樋口さんが昨年の基金助成を受けて実施した活動と今後の方向を説明。
  • 各地で講演会を展開、原発の危険を自分の言葉で語れる人を増やしていくことが大事という高木仁三郎さんの教えを実践。

以下、質疑応答

瀬川さん: 札幌はNPO先進地。福島事故の子どもの保養プロジェクトも多い。廃炉めざす会もそういった団体とつながりあるのか?
菅澤さん回答: 人的関係はつながっている。小野、樋口も「むすび場」の活動に関わっている(福島の中学生の保養&勉強合宿の受け入れなど)。
樋口さん回答: 今後は学校単位での受け入れも検討中。

大沼委員: 原発なしでの北海道の地域特性にねざしたエネルギーの具体的イメージは?
菅澤さん回答: 熱エネルギーの利用の仕方、廃炉産業の受け入れの余地など、議論している。

貴田委員: 原発直近と遠い町とで、意識も違うと思うのだが、講演内容はそれに応じて変えているか?
菅澤さん回答: 直近地域では、廃炉産業についての情報提供もしている。それぞれの地域の産業(たとえば酪農など)も考慮に。

遠藤委員質問: 日本海側は、きりたった地形が多いように思うが、これは地形学的な理由があるのか?
菅澤さん: 崖がすべて活断層というわけではないが、海底地形の複雑さと海岸線の複雑さは関係している。


13:50-
(9)柏崎のみらい調査団「ドイツの原発廃炉後の地元自治体に関する調査研究」 発表者は、飯塚寿之さん(柏崎市議)と澤井正子さん(原子力資料情報室)

  • 原発停止・廃炉で町はどうなって行くか。これは、推進派・反対派共通の関心であり課題である。
  • 市予算482億円、うち70数億が原発関係。
  • 廃炉になることは時間の問題、柏崎の未来はそれを前提に考えざるをえない。
  • 脱原発先進国ドイツで、政策に至る過程と原発の町のその後の地域振興について研究したい。
  • グライフスヴァルト原発(解体中)、EWN社、ルブミンの町、ユーンデ村(バイオマス自治体)、ドイツ電事連、緑の党、環境団体などを訪問する。
  • 知見を柏崎にもちかえって、考える材料にすべく市民に伝えていく。
  • 中越地震直後、原発が止まったとき、「30年後の柏崎を考える」というシンポ(2008)。
  • 推進派も関心を寄せた。原発を再開するにも廃炉するにも、長期的視点は欠かせない。
  • 原発がほんとうに柏崎を豊かにしたのか、という点も長期的視点で検証しないといけない。
  • ドイツ原発(廃炉後)の使用済み燃料のサイト貯蔵(中間貯蔵)のあり方。
  • ルブミン町長からは訪問歓迎の返事をもらった。
  • EWN社(解体ビジネス)の作業の詳細を見てきたい。
  • 「柏崎のみらい」は飯塚さんの所属会派の名称でもある。調査団には市議のほか県議も参加する。

以下、質疑応答

山下博美選考委員: 議員さんが行くのに高木基金がお金をだす意味は? また議会に報告する以外に、成果をどう市民に還元するか。
飯塚さん回答: 政務調査費は年48万。それはもちろん使う。ほかの調査活動も含めて進めていきたい。

飯塚さん: 原発にかわる財源をどう作っていくかは、一自治体だけで解決できる問題ではない。ドイツでも連邦や州政府の意志決定があってこそ。その詳細な経緯を知りたい。柏崎も県や国にどう発信していくかが課題。

澤井さん: 原発が建っても過疎化は進行しつづけた。原発が柏崎に何をもたらし何をもたらさなかったのかを明らかにしたい。

遠藤選考委員: 2008年のシンポの10項目提言をみると、これだけあればドイツに行かなくてもよいと思えるがどうか? 
飯塚さん回答: 自治体の努力・苦労について、実地に話を聞いてきたい。提言はしたが、柏崎は我慢ができず再稼働の方向へ。市民が納得・安心する提言とはならなかったと反省。

澤井さん回答: 最終処分場がないという点はドイツも同じ。サイト貯蔵は、地域が核のごみをかかえたまま地域振興しないとならない、ということ。そのあたりも注意して見てくる。


14:17-
(10)リリウムの会「東海第二原発廃炉にむけての活動」

発表は東海村の岡本孝枝さん、佐藤佳代子さん、阿部功志さんの3名。

  • 東海村の花が「スカシユリ」(属名Lilium)にちなんで会を名付けた。ブログ、紙版の通信など発行。
  • 福島事故後、東海第二原発の再稼働をめぐって複数の請願。
  • 鎌仲監督の映画の上映、村上村長と鎌仲監督の対談など、慣れない仲間で実現。
  • 村議会にはたきかけ、意見聴取会などを実現。
  • 立地自治体ゆえに、いろいろなことが難しいが、働きかけには手応えがある。
  • JCOの焼却施設建設の問題が浮上、説明会を何回も開かせた。
  • 東海村にどれくらい核のごみがあるのか、図版を作って
  • 震災当時、ヨウ素プルームが東海村にも来た。安定ヨウ素剤を飲ませた自治体は茨城県にはひとつも無かった。
  • リリウムの会などが働きかけ、東海村では子どもの甲状腺検査を独自におこなっている。
  • 原発だけでなく関連施設が東海村にはたくさんある。まったく意識せず生活してきたが、知って愕然とした。しかし、原発に依存する人々の発言力が強い。
  • 村民の考え方はいろいろあるが、東海村を大事にしたいという共通性をいかして、意見をかわして、ともに考えていく土壌をつくりたい。
  • 再稼働、廃炉をめぐって、議会の意識も変わってきた。

以下、質疑応答
 

樋口さん(泊原発の廃炉をめざす会)質問: 私たちも同じような活動をしているが、こんなに沢山活動できていない。どうやっていますか?
岡本さん回答: 私たちは311後に気づいた。議会傍聴もしたことなかった。今は議員さんともどんどん会って、攻めの姿勢でやっている。

松崎早苗理事:「対話しましょう」という路線はよいが、それだけだと潰されてしまう。村上村長まではそれでいけるが、その先、挫折しないよう、よくよく心してください。裁判をやっている人たちともつながって欲しい。

フロア女性から: ひとり国会議員を出すことが大事。これだけ活動できる力があるんだったら、ぜひそれを考えて。
岡本さん: 推進派の巻き返しも目についてきた。まず村議選にむけて力をいれるが、国会議員もほんとに出したい。


14:45-

(11)嶋田淑子さん・森田修さん(長島の自然を守る会)
「上関原発予定地周辺の生物多様性の解明と普及活動」
 

  • まず、上関原発計画の現況の説明。
  • 埋立免許の更新問題、県知事は判断ひきのばし(公約違反!)中電は延長申請を出した。知事は却下せず補足説明求める。
  • 埋立てが計画されている田ノ浦湾(長島)、「瀬戸内の小さな太平洋」と言われる豊富な貝類。海藻は日本海側のものも棲息。
  • 中電のアセスには希少種などの重大な見落としが沢山あった。会の調査でこれらを発見し、それで原発計画を2年以上遅らせることが出来た。
  • 中国電力は「公的レッドリスト」に載っていない、とずって言ってきたが、昨年、環境省のRDBに登載。これも会の成果。
  • カンムリウミスズメの生態、とくに繁殖実態を明らかにしていきたい。発信器をつける計画。
  • オオミズナギドリについては、採餌行動の特異性を解明したい。
  • 魚類もふくめ、生き物の生態をより深く解明する調査を続けたい。
  • ポスト原発の町づくりの学習会なども計画。フィールドワークに参加したい人が寄り集まる場にしたい。

以下、質疑応答

細川理事コメント: ずっと基金が支援してきて、とても水準の高い市民科学に到達してくれて嬉しい。これくらいのレベルになると、研究費をどこからでも取れるんではないかな?という気もする。

細川続き: あと、珍しい生物を守る(それ自体は必要だが)と言うだけでなく、彼ら生き物がいる世界が私たちの日々の生活にとってもつ意味をもっと発信してほしい。

森田修さん: 海域を少しひろげ、経済の観点もふくめて海を見なおして行く。祝島ばかりが注目されてきた傾向もあるが、長島のほうでも(ひどい嫌がらせを受けながらも)反対をはっきり口にしていきた少数の方がいる。そういった方があって../続き

そういった方があって今の私たちの運動が可能。だから、原発計画の中止だけでなく、上関の町の未来を考えることが不可欠。
大沼委員: 高木基金の助成の鏡のような存在。若い研究者がたくさん育った。研究者を市民の側にひきずりこんだという功績は大きい。

 

【高木基金プレゼン12被曝実態】
(12)矢ヶ﨑克馬さん(内部被曝問題研究会)

「放射能モニタリング検証による被曝実態の解明と市民の被曝防護」 
  • 被曝研究の歴史は、被曝の実態をいかに公的データに載せないか、という歴史であった。広島では、台風で汚染が洗い流されたあとのデータだけ基づく、など。
  • 福島のモニタリングポスト(MP)の表示値は、住民が実際に被曝している空間線量の半分程度しか示していない(データ、グラフ)。
  • チェルノブイリの汚染防護マップと法定汚染ゾーン。初期にどれだけ汚染されたかにもとづいてゾーン指定。
  • チェルノブイリ法定汚染ゾーン、5mSv/y以上は「移住義務」、1〜5mSv/yは「移住権利」。外部被曝:内部被曝=6:4として、住民を守る。
  • 日本もチェルノブイリ法と同じ基準で保護しないといけない。そのことを明らかにすることを目的に調査する。
  • 東京など都市部ではコンクリの建物が多いので、航空機モニタリングと実測の誤差が大きくなる。実測をきちんとしていく必要。市民の協力をえて、回数と地点を多くおこないたい。

以下、質疑応答

長岡の佐藤さん: エステーからエアカウンタ100本寄贈を受けた。これを使っての測定活動をしたいが
矢ヶさん回答: きちんと較正した測定器と対比して誤差を確認しておかないといけない。

フロア男性質問: 法定ゾーンはウクライナ・ベラルーシ・ロシアで共通なのか?
矢ヶさん回答: ほぼ同じ基準で設定されている。

瀬川さん: 調査の趣旨はゾーン判定をすること? 支援法の議論では指定地域の設定自体がネックになってる。
矢ヶさん回答:チェルノブイリでできたことがなぜ日本でできないのか。チェルノブイリも市民の要望や運動がなければ法定ゾーンはできなかった。矢ヶさん: 福島県のMPだけを問題にしていては埒があかない。東京の汚染状況も実は分かっていない。 


(13)小松梨津子さん(市民が学ぶ甲状腺検査の会)
「福島県の子供たちの甲状腺予備検診プロジェクト」
 

  • 代表の荘司信行さんは急なことがあって来られず。
  • 「達成可能な最大限の心身の健康を享受する権利」を追求する。
  • 西尾正道医師(北海道がんセンター院長)の協力をえて甲状腺検診をおこなう。データを当事者に渡し、きちんと理解してもらい、定期健診を続けてもらう。医学的Q&Aを学ばせる。
  • 福島県の検査の仕方がなぜだめなのか。医師ではなく臨床検査技師が短時間でやっている。画像を受診者に渡していない。説明もしていない。
  • 「被曝医療行政改革」をしないとだめ。原爆医療は厚労省担当だが、原発由来の被曝医療は環境省の所管。
  • 福島県全域を中心に、市民が学ぶ「親子甲状腺検査」を実施。県外の高線量地域の相談にも応じたい。
  • これまでは無償でやってきたが、限界もある。ジェルなど消耗品の出費も大きい。

以下、質疑応答 

大沼委員: 西尾先生がひっぱりだこだが大丈夫か。瀬川さん: 保養先での検診という形も必要では。

小松さん回答: それもやりたいが、まず福島が第一優先。

フロアから質問: 検査する人の技術研修は?
 小松さん回答: 検査は西尾先生自身がする、というのが私たちの計画の原則。出費計画は、ほとんど西尾先生の交通費。きちんとしたデータは政策に生かしたいと言ってくれる国会議員とも連携。


(14)南相馬の吉田邦博さん(安全安心プロジェクト)
「生活環境の放射能汚染 実態調査と健康防護衣類、
 頭髪放射能汚染状況調査及び、人体への影響勉強会」 
 

  • 食品や土も測ってきたが、空気の汚染に注意が必要であることに気づき、衣服・頭髪の調査に重点をおく。
  • 外干しの衣服が意外と汚染される(データ)。
  • 切り干し大根と同じように外に長時間干してみたら、やはり汚染濃度は高くなった。
  • 洗濯によって衣服Aから衣服Bにセシウムが移行するというケースも判明。何回洗っても下がらないことも。
  • 汚染衣服をコーディネートすると、ひとり500Bq装着している。ひどいケースでは上着1着で数万Bqということも。
  • よく洗えば落ちる、という「常識」は成り立たない。
  • リンスを使うと吸着しやすくなるという米国のデータもある。
  • 空気の汚染密度と空間線量は必ずしも比例しない。南相馬は、山側が高く、海側が低い(空間線量)とされている。海側のわが家(0.04uSv/h)で作った切り干し大根は千数百Bq/kgあった。
  • 住民の生活空間での汚染実態を事実として明らかにしていきたい。

以下、質疑応答
瀬川さん: 洗ってもおちない場合があるというのは新しい知見だと思う。戸外に干すより屋内に干すほうがセシウムの数値が高いのはどうして?

吉田さん回答: ちがう季節での測定かもしれない。だいたい夏のほうが高くなる。お父さんの服と子どもの服を一緒に洗って高くなる場合もあるので、別に洗うほうがよい。仕事や子どもの外遊びの行動にもよるが。


※ 瀬川さんより後日補足: 考えたら、洗っても落ちないからこそ、防護服を着て使い捨てしているんですよね。公衆の服も子どもの服も同じという当たり前のことに気付いて実際に調べているのが新しいと思います。
 

鈴木委員: これから何をどうするのか?
吉田さん: 衣服の汚染が健康にどう影響するのかは分からない。しかしICRPの係数ですら、呼吸の影響は大きく想定されている。ともかく分からないことが多いので、事実を明らかにしていきたい。

大沼委員: 水盤調査など、降下の裏をとる調査は?
吉田さん: 水盤もサンプラーも使ってデータとってるところです。衣服の汚染との相関が出ればと。

貴田委員: 土壌でも結合してとれないということが重要な問題。衣服の場合も結合ということを考えないといけないのかもしれない。素材との関係はどうか?
吉田さん: 夏場の服のほうが高い。素材も関係あるかもしれない。データ集める。

 

16:35-
(15)阪上武さん「原子力規制監視市民委員会」
 

  • 高い独立性と権限をもって発足した原子力規制委員会だが、原子力ムラ寄りの仕事をしている。
  • 再稼働させるために規制委員会がしゃかりきになっているという現状。・この動きに直接「待った」をかける必要。検討状況の把握と中味に即した批判が大事。
  • ある意味「敵の土俵」に乗ってたたかう。土俵自体を否定すべきという意見もあろうが、現在の政治情勢のなかで土俵を壊すことはすぐには難しい。
  • 防災指針と新安全基準が再稼働準備の焦点。保安院時代は、批判的研究者も関与できたが、規制委員会になってからは批判派は完全に排除された。
  • 2月のパブコメ、防災指針についても安全基準についても、内容の難しい話だったにもかかわらずそれぞれ3155通、4300通のコメントが市民から寄せられ、かつ、みな自分の言葉で書いている。
  • 今後、院内集会、政府交渉、自治体との意見交換など重ねていく。

以下、質疑応答

質問: 規制委員会の設置法は議員立法で、これは危ない性格がある。
阪上さん: 設置の趣旨とちがう運用がされやすいなど、注意している。
瀬川さん: 防災計画をターゲットにした取り組みは?
阪上さん: 3/17が期限だったが、/続く

阪上さん(続き) 間に合わない都道府県が半分以上。琵琶湖の水がやられた場合の対応とか、避難経路が原発の近くを通るケースとか、地点毎に固有のことがある。5K/10Kと30K/50Kではやはり話がかなり違ってくるので、これまでの知見だけでは対応できない。

細川: 複数炉の同時メルトダウンとか、震災で道路が使えなくなるなかでの避難など、福島での教訓が地域防災計画に生かされているようには見えない。
阪上: 福島事故の原因解明もできていない段階で「防災」が成り立つのかという視点で監視する。



17:15-

(16)満田夏花さん「被ばくと健康に関する市民・専門家委員会の設立と運営」
 

  • 福島県の県民健康管理調査(KKK)の問題点。基本調査は1回のみ。健康状態を書く欄なし。甲状腺はエコー検査のみで血液検査なし。県民の不信感は高く、回収率は低い。「避難区域」からの避難者のみ健康検査。
  • 調査の目的は「不安解消」、小児甲状腺癌以外の疾患や健康被害を想定していない。第三者が検証できない仕組み。このままでは現状把握さえ危うい。
  • 健康管理は、「避難区域」外、そして県外にも対象を拡大することが必要。「原発事故子ども被災者支援法」の役割とつなげていくことが重要。
  • 復興庁の「支援施策パッケージ」には健康のことが入っていない。高速道路無料化だけが喧伝されている有様。
  • 市民とともに専門家も大きく声をあげて、社会に提起していく必要がある。そこで「市民・専門家委員会」を1月に設置した。http://blog.livedoor.jp/trench8397/archives/51107652.html
  • KKKの問題点を整理し、原子力規制委員会の動きをふまえ、提言をまとめた。
  • KKK運営側も4月で委員交代するなど仕切り直し。
  • 他県での検診結果のレビュー、国際機関の報告書のレビュー、政府・議員への政策提言、健診に関するキャンペーンなどやっていく。

以下、質疑応答

中下理事: 市民による自主検診の動きも各地で出ている。ぜひ連携してほしい。
満田さん: 規制委員会は20mSvもKKKもともかく追認してしまう姿勢。連携とりながら、突き崩したい。

中下理事: エコチル調査(環境省/化学物質/12年間にわたる継続調査)に、311以降、放射線も項目に入れるよう要請したら、福島県だけ入った。他県でも入れるよう働きかけないと。次世代を調べるという枠組みがひとつもないのは問題。

吉岡斉さん: 緊急作業員など被曝労働者の健康問題は?
満田さん: アプローチが難しくハードルが高いので今回の調査計画に入っていない。意識はしている。




 

(17)渡辺瑛莉さん(FoE)
「「原発事故子ども・被災者支援法」市民会議の運営」
 

  • 市民会議は昨年7月設立。現在52団体。
  • 被害者の救済、権利の確立が進んでいない。政府の賠償指針は被害実態をカバーせず、避難指示区域外の状況が放置されている。
  • 支援法は、議員立法だったので、策定過程で市民の声がいろいろ反映された。しかし政府側のイニシャチブに欠ける。
  • 支援対象地域がどこか、という根本的なところが不確定。市民会議は1mSv
  • 理念法なので、実施計画が策定されないと何もおこらないが、策定されていない。
  • 支援実施の「基本方針」を立てさせるため、要望書提出。
  • 被災者の状況は刻々と変わるので、こまめな状況把握が必須。
  • 超党派議員連盟、2月22日現在96名、わりと大所帯。全会派はいっている。昨日も被災者ヒアリングがあった。
  • 状況把握とニーズ把握のため、オンラインアンケートをしたい。
  • 復興庁が昨日パッケージは、支援法に対応するものとしては、あまりに貧弱。
  • 来年度概算要求の時期を焦点に、働きかけていきたい。

以下、質疑応答

瀬川さん: 対象地域が確定していないのは、ともかく1mSvを政府が認めたがっていないということ。これを打破する戦略は?
渡辺さん: 一番難しいところ。ソフトアプローチもしつつ、1mSvという線は譲らない。個別の政策を要請していく。

大沼委員: 愛知県で子ども疎開の受入れを県が検討した際、福島県が呼応せず、立ち消えになってしまった。滋賀の嘉田知事が同様のことを検討をしたときも同じ反応。福島県(行政)をなんとかしないと。
渡辺さん: 福島県も一枚岩ではない。どこで誰が止めたのか分からない面も。

細川理事: 被災者はネットにつながっていないことが多い。オンラインアンケートなどで漏れ落ちてくることもあることを忘れないでほしい。
渡辺さん: 予算がないということでオンラインに頼りがちだが、おっしゃる通りなので、集会など工夫していきたい。

 

(18)堀田千栄子さん(FFTV)
「脱原発に向けた市民の情報発信 フクロウ・FoEチャンネルの開設」   
  • フクロウの会とFoE Japanの協同行動の紹介、20mSv問題、「避難の権利」運動、土湯ぽかぽかプロジェクトなどなど。
  • 大手メディアが事故の深刻な影響についてほとんど報道しない現状。市民にこの現実を認知してもらうのが課題。
  • 自分達だけでやっている運動ではだめ。従来型広報の伝達効率の悪さ。
  • 自分たち主体の活動でえた一次情報・分析結果などコンテンツはある。
  • 正確な重要情報をタイムリーに共有する。 → 自分たちで放送しちゃえ! ということで開局。
  • アーカイブにしているので後からでも見てもらえる。
  • 昨年9月開始、週刊と特集の二本立て。
  • 放送サンプル上映(4分弱)「15分でわかる」シリーズ、ほか
  • アーカイブの視聴数ベスト13 渡利大波地区の除染の限界、20mSv、などに注目度が高い。アーカイブは300〜1100名が見てくれている。
  • 今後の課題は、視聴数を増やすこと。コンテンツの強化と双方向コミュニケーションの確立。
  • 現地に赴いて放送することもやっていきたい。
  • 専門性の高い方や重要なことをしている人たちをお呼びして、発信していきたい。
  • 市民が自由に発信できる状況を保つためには憲法を守ることも重要!

以下、質疑応答


カワバタさん(千葉大): 発信する側が伝えたい情報と、本当に伝えたい相手がマッチしてない。ネットは見たいものが見に来るという性格。大手メディアしか見ている人に伝えないと。ニコ動など視聴者の多いメディアに宣伝を出すなどしてはどうか?

地球の子ども新聞さん: コマーシャルを作りたいという学生はわりといるので、試しに作ってもらってはどうか。
 

堀田さん: 英訳をつけるなどの抱負もある。ぜんぶボランティアでやってもらうのはつらいので、資金確保したい。

小川町からきた女性: FFTVは知らなかったが、アワプラとかIWJとか、Democracy Nowとかは時々見ている。連携してはどうか? 
堀田さん回答: アワプラの白石さんには沢山助言もらっているし、ウェブサイトも立ち上げてくださった。


(19)豊田直巳さん

「映画「遺言 安全神話の果てに」制作・上映企画」


  • 企画自体はひとりではなく仲間たちと進める。
  • これまで世界で起きていることを日本に伝える仕事を主にしてきた。今回の事故は、日本でおきたことを世界に伝えないとならないレベルの出来事。
  • 記録と記憶が消されようとしている。消されないようにしたい。
  • 飯舘村に通って記録している。毎年、同じ場所で「除染」をしている。効果はないが、こういうことをさせているという記録は重要。「除染が復興」という態度が支配してる。
  • (福島市の)除染プラザ、1日20人くらいしか来ない展示ルームで4人働いている。「あなたがたは博報堂ですか?」「いいえ電通です」という世界。
  • フッテージ上映。英語字幕。しぼった原乳を捨てる長谷川さん。タイトル(仮)は「The Will(遺言)」失ったものを記録したい。
  • 小高地区など高濃度汚染地区も撮影。事故後1週間め。
  • 雨樋下500uSv/hだが全く知らされないで暮らしていた夫妻(事故後1ヶ月)
  • 「原発さえなければ」と壁にチョークで書いて自殺した酪農家の現場と遺族(姉)。弟の言葉が誰に向けられたものか、と鋭く問いかける。

以下、質疑応答


長岡の佐藤さん: 一方で「気にしなきゃ大丈夫だ」とか「地域連帯して明るくやっていく」という人々もいる。そういう方面も取材しているか?
 

豊田さん: 記憶に残ってもらうためには、情報で残る人もあるだろうが、「情」で残る部分もある。文字でやるよりも生の映像を伝えないといけないものもある。
 すでにVTRは200時間を超えているが、1時間半にする。完成度は高くしないといけない。心に残らないと電通には勝てない、博報堂には勝てない。
 作品からもれたVTR(多くは「情報」の部分)は、別途、白石さんらとも連携して公開していきたい。
 昨年出版した『フクシマ元年』(毎日新聞社)の英語版は出来た。あとスペイン語版、ハングル版など、準備中。
 震災ものの映像作品はたくさんあるけれど、『希望の国』は少しヒットしたが、ドキュメンタリーは軒並み苦戦。いちばん入ったのでも6千人くらい。
 制作費用は1500万円くらい。英語版やスペイン語版を用意する費用を高木基金にお願いしたい。
 山形ドキュメンタリー映画祭を始めとして、世界各地の映画祭に出していきたい。マスコミは問題あるけど、マスコミで働いている良心的な友人もたくさんいるので、僕はマスコミと一緒に出来ることは、まだ試していきたい。


 

以上で全19プレゼン終了。

朝からの長丁場、出入りはあったが、聴衆60〜80人くらい(関係者含む)。
 

高木基金事務局長(高木久仁子)の挨拶 
 日本の市民活動の層をあつくする作業を一緒にやっていきたい。今日は長時間、どうも有難うございました。


 

ひきつづき、同会場にて理事会 19:20-20:55 
 最終選考 投票にもとづき議論をへて、助成対象と助成金額を決定(合計976万円)。
詳細は、おって高木基金ウェブサイトにて公表されます。
(応募者へは事務局より個別に評価のポイントなどをお伝えします。)